アーニーガンダーセンがレポートした福島原発事故後の影響(2015年ウラン国際会議より)

更新 | 2015-05-14公開

2015年4月14~16日に、World Uranium Symposium(ウラン国際会議)がカナダのケベックにて開催されました。

このシンポジウムには世界各国からウランや原子力に関する専門家が参加し、公演を行ったのですが、チェルノブイリ原発事故の被爆者支援や、福島原発事故後の住民健康支援をされている振津かつみ医師や、アーニーガンダーセンという原子力の専門家も参加されており、福島第一原発事故の4年経過後の影響についてのお話をされています。また、菅直人元総理大臣もビデオメッセージで参加されています。

重い話になってしまうので悩んだのですが、今日はそのことを記事にしたいと思います。特にこのアニーガンダーセンのプレゼン内容について、日本人としては聞いていて辛い内容ではあったのですが、ご紹介できればと思います。

世界最大のウラン輸出国カナダ

そもそも、カナダのケベックにてこのシンポジウムが開催されたことは、とても有意義なことです。

カナダのニューブランズウィック州やアルバータ州などには大きなウラン鉱山があり、その輸出量は世界最大です

ウランの主な用途は原子力発電と核兵器。カナダで産出されたウランが、広島と長﨑の原爆にも使われたそうです。核兵器そのものを輸出しているわけではありませんが、いずれの用途であっても、環境破壊や被爆被害をもたらすものには違いありません。

環境意識の高い市民が多く、環境共生国でもあるカナダ。世界最大の輸出国という事実は、カナダ在住者としても残念な気持ちになります。

でも、その一方で、ブリティッシュコロンビア州やノバスコシア州では、環境破壊や鉱山従事者の被ばくの観点から、ウランの産出自体が公式に禁止されています。州によって政策が異なるのは、地方自治が進んだカナダらしさでもあります。

また、カナダでの原子力発電は、オンタリオ州、ニューブランズウィック州、ケベック州で稼働していましたが、ケベック州にあった唯一の原発は、2012年に廃炉が決定し、現在は稼働していません。カナダ全体で見ても、原子力発電量は減少してきているそうです。

このように、カナダのウランや原子力を取り巻く状況は複雑で、色々な意見もあります。

経済活動か、環境保護か──。

今回のウラン国際シンポジウムは、この問題に向き合い、健康、国際社会の安全、そして環境保護のためにより良い選択をするために開かれたものです

ウランの最大輸出を誇るここカナダで、また原発廃炉を決めたケベックで、このような会議が開かれたことは大きな意味を持つことだと思います。

アーニー・ガンダーセンが提示した福島第一原発事故後の放射能汚染データ

国際会議の中では原子力専門家であるアーニーガンダーセンもプレゼンを行いました。福島第一原発事故後の海の汚染、日本の汚染状況などに関して、最新のデータと共にレポートしています。

これまでも、日本各地にある放射能測定室の情報などから、食品、土壌、大気などから放射性物質が検出されていることは知ってはいましたが、改めて海外の専門家からデータと共に現実を突きつけられると、厳しい状況であることを思い知らされます。

例えば──

1. 海の汚染

日本でもニュースにもなっていましたが、今年4月に北米西海岸の海水から、1立方メートル当たり約7ベクレルのセシウムが検出されました。これは決して微量と呼べる量ではなく、高濃度汚染なんだそう。

また、福島原発から放出された放射性物質がどのように太平洋に広がるか、海の汚染予測が2012年に発表されていましたが、予測通り、事故4年経過後から放射能物質が西海岸に到達しています。

しかし、その検出量はというと、予測の29倍も高い値だったということです。

seawater

データ元:アニーガンダーセンプレゼンビデオ

グラフの通り、予測上ではこれからますます汚染濃度が高くなるというのに、検出当初から29倍・・・。これからどうなってしまうのでしょうね・・・。

太平洋の汚染予測が発表された2012年以降も、福島原発からは度重なる高濃度汚染水の放出が起こっていますし、そして汚染水は現在進行形で放出されているので、予測よりもはるかに酷い状況になってしまったと思われます。

そもそも、東電や国が発表していた事故当初の放出量自体が、実際はより少なく発表している可能性もあります。

 

2. ダストの汚染

日本各地で検出されたホコリの汚染状況のデータもありました。

dust

データ元:アニーガンダーセンプレゼンビデオ

このように、サンプル全体の73%から放射性物質が検出されたそうです。

 

top10dust

データ元:アニーガンダーセンプレゼンビデオ

こちらは、サンプルの内、汚染濃度が高かったという上位10サンプルのロケーション。周囲の環境や原発事故後の清掃状況などにも依存するとは言え、一番濃度が高かったのが名古屋ということのは衝撃。また、東京が上位を占めているのも怖いです。

食品の汚染は、食材に気を付ければある程度は避けられます。でも、このダストの放射性物質は呼吸を通じて体内に取り込まれるわけで、24時間避け続けるのが非常に難しいところですよね。また、食品と違って肺には排出ルートがないため、蓄積される一方です。

また、アーニーガンダーセンは福島原発事故によって10万~100万人の日本人がガンになると見積もっていたそうですが、今回のダストの汚染データを見てそれを再確信した、とも話しています。

 

3. 子供靴の汚染

福島とアメリカの子どもの靴の汚染状況の比較データもありました。

shoes

データ元:アニーガンダーセンプレゼンビデオ

靴紐の汚染状況だそうですが、アメリカの子どもたちの靴は検出限界以下だったのに対し、福島の子どもたちの靴はいずれも放射性物質が検出されています。

つまりは、靴紐を結ぶ度に放射性物質を手で触っていることになります。IAEAに言わせると、この程度の汚染であれば安全であるとのことですが・・。

 

アーニーガンダーセンのプレゼンは下記のビデオからご覧いただけます。英語の勉強にもなるし、ぜひビデオでご覧いただければと思います。私は聞き取れない箇所などがあり、3回、4回とリピート再生しました・・

菅直人元総理大臣のビデオメッセージ

国際会議では菅元総理もビデオメッセージで参加しています。

ご存じの通り、菅元総理は福島第一原発の事故後に、脱原発へ考え方をシフトされていますが、今回のシンポジウムでは下記の内容のメッセージを送っていました。

一旦原発事故が起こってしまうと、国に、そして国民に、戦争に負けた時に匹敵するレベルの大ダメージを与える。福島の問題は現在進行形で終息の見込みは立っておらず、避難されている方も沢山いる。そんな危険な原子力発電はもうやめて、自然エネルギーに変換する必要がある。

 

ビデオメッセージは下記にてご覧いただけます。


やっぱりとても重い内容になってしまいましたね・・。

捉え方はそれぞれだと思いますが、個人的にはやっぱり健康のことを思うと放射能は避けたいですし、環境の為にも、原発利用よりも自然エネルギーに代わってほしいと、強く思います。

今回のアーニーガンダーセンのレポートを見ると、ますますそう願わざるを得ません。

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