カナダ東海岸にあるプリンスエドワード島。赤毛のアンの舞台ともなった、自然豊かで、とても美しい島ですが、この10年で世界各国からの移民が急増しているのをご存知ですか?
今回はプリンスエドワードの永住権事情、移民増加による島民の反応、経済への影響などをご紹介です。
この記事の目次
プリンスエドワード島とは
プリンスエドワード島はカナダの東の端にある島です。略称でPEIとも呼ばれます。
日本人にとっては、赤毛のアンの島と言ったほうがピンとくるかもしれません。赤毛のアンの作者モンゴメリーの生誕の地でもあり、赤毛のアンの家もあることから、日本人に大人気の観光地です。
夏の繁忙期に訪れると、日本人観光客の多さに驚きます。私自身、カナダを代表する観光地であるバンクーバー、トロント、モントリオール、ケベックなどに訪れたことがありますが、間違いなくプリンスエドワード島がカナダで一番多く日本人を見かけた都市でした。
プリンスエドワードは、島全体で一つの州になっています。島の面積は沖縄の3倍くらい。車で半日くらいで一周できる大きさで、カナダで一番小さい面積の州です。
人口は2018年現在、約15万人。日本でいうと、埼玉の狭山市と同じくらいの人口規模です。(このたとえが伝わりやすいのかは別として・・・)
州都シャーロットタウンは、こじんまりしていますが、オシャレなカフェやレストラン、雑貨屋などがあり、とても可愛らしい町並みです。
カナダで最も人口が急増している州
出典:PEI州政府
さきほどプリンスエドワードアイランド州(以下、PEI)の人口は15万人だとお伝えしましたが、15万人に達したのは2017年のこと。実はPEIの人口は、この10年で急増しており、カナダで最も高い人口増加率を誇っています。
出典:CBC News(クリックで拡大します)
2016年から2017年にかけての人口増加率は、カナダ平均で1.22%。ブリティッシュコロンビア州は1.25%、オンタリオ州は1.55%の中、PEIは断トツの1.71%です。
人口急増の背景は「移民の増加」
トロントやモントリオールのような大都市を抱える州ではなく、田園風景の広がる、カナダで一番小さな州のほうが人口が増えているなんて、驚きですよね。
PEIの人口増加の大きな理由は、ずばり、移民の増加です。
ご存知の通り、カナダは積極的な移民政策を採用している国。世界各国から多くの移民・難民を受け入れています。
カナダに移住した人のほとんどが、トロントやモントリオール、バンクーバーなどの大都市に定住していますが、ここ10年、PEIへ移民する人の数が6倍の勢いで増加しているんです。
出典:CBC News
この円グラフはPEIに移住した移民の数を年代ごとに分けたものです。
2001~2005年の移民者数はたった555人だったのに対し、2006~2010年には1335人に、そして2011~2016年には3360人にまで増加しています。
しかも、2016年以降、その勢いは加速。
出典:CBC News(クリックで拡大します)
上記グラフは、四半期ごとの移民の受け入れ数を表しています。
2015年までは四半期ごとに300~500人ほどの移住者がいましたが、2016~2017年にかけては500~750人まで増加しています。たった1年で移民者数は約1.5倍でに急増です。
全人口に対する移民の割合は2016年時点で6.4%まで上がっていて、東海岸4州の中でもトップを誇っています。2018年現在は、おそらく7%位までは上がっているかもしれません。
永住権が取得しやすい地方プログラム
でも、なぜPEIに移民が急増しているのか?
それは、州独自の移民プログラムと、2017年からカナダ東部4州を対象に試験的に導入されている「アトランティックイミグレーションパイロットプログラム」にあります。
人気の移住先は、やっぱり雇用の多い大都会。国として有能な移民を確保しても、地方の州に移住を希望する人は少なく、なかなか定住してくれません。
そこで、州政府が独自に移民を選抜する州推薦プログラム(Provincial Nominee Program、通称PNP)を用意し、移民の確保に当たっています。
州の労働市場に合わせたニーズの高い労働力を確保することもできますし、州に住むことを約束した上で移民を受け入れているので、連邦政府の永住権プログラムよりも移民の定着率が高くなっています。
カナダの各州がそれぞれのPNPを設けていますが、連邦政府のプログラムに比べると審査基準が緩いものが多く、永住権を目指す人に人気が高いプログラムです。
PEIの州推薦プログラム
PEIのPNPはスキルドワーカー、クリティカルワーカーなどがあります。
特にクリティカルワーカーはハードルが低く、トラックドライバー、カスタマーサービス、肉体作業員、ウェイター、清掃員の職種で、すでにPEI州内で雇用されていれば応募が可能です。
これらの職種はNOCレベルがC、Dという高技能を必要としない職種であり、一般的な移民プログラムではなかなか永住権の申請基準に達しません。いかにPEI PNPの壁が低いかがお分かりいただけると思います。
また、事業家向けの投資移民のカテゴリーもありますが、必要最低資金も600,000ドル、日本円にして約5千万円と、資金のハードルも低めです。
アトランティックイミグレーションパイロットプログラム
また、PNPに加え、2017年からはアトランティックイミグレーションパイロットプログラム(AIPP)も始まりました。
これは、東海岸にあるプリンスエドワードアイランド州、ノバスコシア州、ニューブランズウィック州、ニューファンドランドラブラドール州の4州を対象にした試験的な移民プログラムで、申請基準が低いことで話題になっています。
ジョブオファーこそ必要なものの、NOCの職種レベルはCまで、英語レベルもCLB4(IELTSだと、R3.5、W4.0、L4.5、S4.0)以上でOKです。また、東海岸4州のカレッジや大学を1年以内に卒業した人であれば就労経験も必要としません。
移民増加に対する島民の反応
州推薦プログラムやアトランティックイミグレーションパイロットを通じて、移民が急増しているPEIですが、住民の反応はどうなのでしょう?
特に、トロントやバンクーバーなどと違って、マルチカルチャーがほとんど進んでいない都市なので、移民に対する住民の反応が気になりますよね。
CBCのニュースに興味深い記事がありました。
ダルハウジー大学が州都シャーロットタウンに住む460世帯に電話アンケートを取ったところ、99%の人がここ10年で移民が急増していると感じているそうです。
さらに、この移民急増に対する反応は、
- 57%:良い変化だ
- 40%:移民が増えても大した違いはない
- 3%:悪い変化だ
このように、過半数の人が好意的に捉えていることが分かりました。
私自身、永住権を取得し、東海岸ノバスコシア州のハリファックスに2年半ほど住んでいましたが、住民の約90%が白人という人口比率だっただけに、移民への反応はどうなのだろう?と不安に思ったりもしました。
ところが実際住んでみると、非常に歓迎ムードで、移民を好意的に捉えている印象でした。田舎街ほど人に優しいものですが、それは移民に対しても同じなのかもしれませんね。
PEIの住民たちが移民に対して好意的な理由には、人の優しさだけでなく、PEIの経済が活性化していることも挙げられます。
先ほどと同じ調査では、62%の人が経済が良くなったと認識しています。また、実際に、公共交通機関(路線バス)が発達し、レクリエーション施設や店舗の増加、公園などの整備にも繋がっているそうです。
人口増加により、経済が発展。生活インフラも整い、より住みやすい都市へと変化しているようですね。
懸念は住宅価格の上昇
しかし、良いことばかりではありません。
人口が急増していることで、生活コストの上昇も懸念されています。PEIの住宅価格を例にとってみても、2016年頃から高騰し始めています。
出典:CREA
住宅価格は2018年には落ち着きを見せているものの、州政府は今後も人口増加を目標としていて、2022年までには人口16万人まで増やそうとしています。
人口増加政策の要は、もちろん移民の受け入れです。人口15万人の州が、2017年からたった5年間で1万人近くも移民を受け入れる───つまり日本の状況に当てはめると、外国人人口がたった250万人の現在の日本が、5年間で1000万人もの移民を受け入れるようなものです。そう考えると、いかにPEIが移民受け入れに積極的かが分かりますよね。
この人口増加計画を考えても、今後も住宅価格は上昇が続くように思います。
以上、カナダ東海岸にあるプリンスエドワードアイランド州の移民事情についてご紹介しました。
日本人にとっては憧れの美しい島プリンスエドワードアイランドですが、移民の受け入れに非常に積極的、且つ、経済も活性化しており、生活インフラも充実してきていることを考えると、今こそ移住のチャンスかもしれません。
カナダの永住権取得を考えている方は、プリンスエドワードアイランドの移民プログラムも検討してみてはいかがでしょうか。
カナダ留学&移住を考えている方へ
最後に。私自身、大きな不安を抱えて飛び込んだカナダ。同じようにカナダへの移住や留学を考えている方に、何か役立てることがあれば、とても嬉しいです。質問やご相談などあれば、お気軽に【問い合わフォーム】もしくは【LINE】でご連絡くださいね。
実経験と現地在住者の目線で、できるだけ疑問や不安が解消するよう、お答えさせていただきます。皆さまからのご相談がブログ記事のアイデアにもなっています!
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エージェントがたくさんいて悩みますが、私の知り合いが移住・留学エージェントをやっているので、よかったら一度相談してみてください。私も留学事情などアドバイスを求めるこ