先日、私が住んでいるオンタリオ州から、子宮頸がん検診のお知らせが来ました。
カナダに住み始めて3年。初めての定期ガン検診です!
日本に比べて、カナダでは定期検診が少ないとは聞いていましたが、実際に調べてみると、検査項目や対象年齢、検査に対する考え方など、日本との違いも色々。
今回はカナダの「がん検診事情」についてご紹介したいと思います。
この記事の目次
日本のがん検診は?
カナダのがん検診をご紹介する前に、まず日本のがん検診について少し見てみましょう。
日本では、厚生労働省が定めた指針に基づき、各市区町村でがん検診が実施されています。現在日本で実施されているがん検診は下記の5種類。
出典:日本医師会
会社勤めの場合は、年に一度の健康診断や人間ドックもあり、より充実した健康診断が実施されていると思います。
私も会社員だった頃は、30歳を超えると一気に検査項目が増え、胃カメラや腹部超音波、胸部レントゲンに乳がん検査など、半日がかりで検査を受けなければなりませんでした。
がん検診の種類が少ない
でも、カナダでは予防対策として行われている公共のがん検診は、下記の3つだけ。
- 大腸がん検診
- 子宮頸がん検診
- 乳がん検診
いずれの検査も無料で実施されています。
日本では実施されている肺がん検診と胃がん検診は対象外です。
子宮頸がん検診と乳がん検診の対象者は女性なので、男性は大腸がん検診のみ、と言うことになりますね。
対象年齢が遅く、頻度も少ない
カナダでは検診の種類が少ないだけでなく、対象となる年齢も遅め。かつ、頻度も少なめです。
乳がん検診(マンモグラフィー)
ノバスコシア州とプリンスエドワード州では40歳から、それ以外の州では50歳から乳がん検診(マンモグラフィー)が始まります。
日本は40歳から検診が始まるので、日本より10歳も遅めの州ばかりですね。ただし、2年に一回という検診間隔は日本と同じです。
子宮頸がん検診 (PAPテスト)
日本では20歳から2年毎に受ける子宮頸がん検診。カナダでは、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州では25歳から、それ以外の州では21歳から子宮頸がん検診が始まります。検査間隔も3年に1回と少な目。
大腸がん検診(便潜血検査)
日本では40歳から毎年受ける大腸がん検診ですが、カナダではどの州でも50歳~74歳まで。こちらも、検査間隔は2年に1回と少な目。
このように、どの検診も日本に比べると対象となる年齢は遅め&頻度は少な目です。
ただし、上記はあくまで、無症状の場合の定期検診。
家族に乳がん患者がいる場合や、何らかの症状がある場合などは、上記年齢以外でも定期検診を受けることができますし、受ける頻度も異なってきます。
症状があったり、不安がある場合は、ファミリードクターやウォークインクリニックにご相談くださいね。
対象年齢に上限がある
もう一つ、大きく異なる点が、対象年齢の上限です。
日本では「元気なうちは何歳になっても検査を受けよう」と推奨されており、がん検診には年齢の上限が設定されていません。
一方、カナダでは、高齢になるほど検査によるリスクも高く、検査のメリットが少なくなることから、3つのがん検診全て、年齢に上限が設けられています。
ただ、国民皆保険制度を導入していて、医療費が無料なカナダです。この年齢上限には、医療費を抑えると言う意味も大きいと思われます。
検診が少なくて大丈夫?
このように、対象検査も少なく、対象年齢も限られているカナダのがん検診。
しかも、カナダの会社には、入社した際の健康診断もなければ、毎年の健康診断や人間ドックもありません。(会社で加入している保険によっては、検診費用の補助などもあるようですが)
そのため、政府が行っている3つのがん検診を受ける以外は、あくまで自己管理の世界!
日本では、「早期発見のために、検診を受けましょう」と散々言われてきたのに、こんなに検診が少なくて本当に大丈夫なのでしょうか?!
でも、罹患(りかん)率の低い年齢で検診を実施しても、メリットは少なく、そればかりか、レントゲンを伴う検査の場合、無用な被ばくを重ねることになり、むしろ健康被害を引き起こす、とも言われています。
実際、カナダのがん検診では、検診のメリットだけでなく、デメリットについてもきちんと説明があります。カナダがん協会のHPでも、検診のトップページに下記のデメリットをあげています。
- 擬陽性 – 実際にはがんではないにも関わらず、テスト結果が陽性になることがある。それに伴い、不安やストレス、痛みの伴う不要な検査を受けることになる。
- 偽陰性 – 実際にはがんがあるにも関わらず、見過ごされることがあり、発見を遅らすことにつながる。
- 過剰診断 – がんの種類によっては、放置しても死に至らない、もしくは、生活に悪影響を及ぼさないものが存在する。
- 体に有害 – X線による放射能被ばくのように、体に悪影響をおよぼす。
何かとレントゲン検査を行う日本では、4番目の「体に有害」というデメリットについて語られることが少ないように思います。会社に入社すると、20歳やそこらで毎年受けさせられる胸部X線検査なんて、本当に意味があるのか・・。
「受けた人のほうが受けない人より早死にする」なんていう驚きのデータもあるくらいですもんね。
カナダのがん生存率が低いわけではない
日本に比べると検診の種類も回数も少ないですが、かと言って、カナダのがん生存率が低いというわけでもないようです。
出典:Centers for Disease Control and Prevention
上記は海外主要国の癌5年生存率を比較したものなのですが、日本に比べても、肺がん以外はカナダのほうが生存率が高いくらいです。
検診の少なさには不安も残りますが、この生存率の高さや、検診の効果、体への負担を考えると、カナダのがん検診は妥当と言えるのかもしれませんね。
そう信じるしかない、というか・・。
民間クリニックや一時帰国中に検査を受ける人も
それでもカナダの検診に不安があるという方は、プライベートクリニックに行って、自費で検査を受けることもできます。プライベートクリニックは下記から検索できますよ。
http://www.findprivateclinics.ca/
ただし、費用は高い!脳のMRIだけでも1000ドル前後です。人間ドックのように総合的に検査しようと思うと、かなりの金額を覚悟しなければなりません。
そのため、日本に一時帰国する際に、人間ドックを受けてくる方も多くいます。
日本だと検査も半日程度で終わり、費用も安いですよね。MRIや超音波検査などが含まれた脳ドックでも5万円以下のものもありました。(→参考:人間ドック【PET/CT検査】【脳ドック】)
カナダのがん検診を受ける方法
カナダで実施されている3つのがん検診。最後に、受診する方法をご紹介です。
まず、受診の対象となるには、各州政府の健康保険に加入している必要があります。
州の健康保険に加入していれば、特に手続きなどは不要で、対象年齢になると自動的に検診の案内が郵送されてきます。あとは、手紙の案内にしたがって、検診の予約を取ればOKです。
ちなみに、今回私が受ける予定の子宮頸がん検診は、大きな病院ではなく、ファミリードクターで行います。ファミリードクターがいない場合は、検査が受けられる病院を紹介してくれるそうです。
まとめ
以上、カナダのがん検診についてご紹介しました。
カナダの検診は──
- 乳がん・子宮頸がん・大腸がん検診のみ
- 対象年齢が遅く、年齢には上限もある
- 検査頻度が少ない
- 州の健康保険に加入していれば、自動的に案内が来る
このような内容になっていました。
日本の健康診断に対する感覚からすると、カナダの検診には不安もあります。でも、個人的には、検診のデメリットも気になりますし、がんの生存率も同じくらいなので、今のところは、自費で検診を受けに行こうとは思いません。
でも、その分、日々の健康管理には十分に気を付けなくてはいけませんね。医療のアクセスがすこぶる悪いカナダでは、尚のこと。。。