カナダ公立学校のフレンチイマージョン②考慮すべき問題点やデメリットは?

更新 | 2018-01-28公開
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前回の記事では、カナダの公立学校で導入されている2つの言語プログラムについて、特に「フレンチイマ―ジョン」の内容やメリットについてご紹介しました。

 前回の記事 

カナダ公立学校のフレンチイマージョン①プログラム内容やメリットは?

フレンチイマ―ジョンに通わせ、二か国語習得ができたら、確かに子供の将来の選択肢を大きく広げてくれるでしょう。

でも、本人も、家庭も、相当な努力を必要とするフレンチイマージョンに通わせることは、子供にとって本当に正しい選択と言えるのでしょうか──?

特に、日本人の親を持つ家庭にとっては、フレンチイマージョンに入れると、3言語以上にチャレンジすることになり、不安を持つ方も多いと思います。

今回の記事では、フレンチイマ―ジョンに入れる意義や、フレンチイマージョンの不安点、メリットの裏側にある問題などを考えてみたいと思います。

フランス語を使う機会は少ない

まず、そもそもからです。カナダでフンラス語を習得する意義はあるんでしょうか??頑張ってフランス語を習得しても、結局使う機会が無ければ意味がありません。

フランス語が活かせる仕事がどれくらいあるのか、カナダで有名な求人サイト「Indeed」で、フランス語が要件に入った求人を見てみると。

『子供の将来の可能性を広げるために』と考える方が多いフレンチイマ―ジョンですので、年収9万ドル以上の求人で絞ってみましたが、、、

トロントの9万ドル以上の求人数は2018年1月現在で4,754件。それをフランス語を必要とする求人に絞ると、たった210件にまで激減です。カナダで最も活発なジョブマーケットのトロントでも、フランス語の需要は非常に少ないようです。

トロント以外の地域も見てみると、このような結果。

収入9万ドル以上の求人件数収入9万ドル以上で
フランス語を使う求人
バンクーバー615件40件
カルガリー679件29件
モントリオール708件683件
オタワ534件222件

さすが、ケベック州のモントリオールや、政府系の仕事が多いオタワであれば、フランス語を必要とする求人も多くなりますね。

でも、バンクーバーやカルガリーのような地では、ほぼ皆無。このような都市で暮らすのであれば、フランス語教育はあまり意味がないように思えます。

必ずバイリンガルになるわけではない

また、フレンチイマージョンに通っても、必ずしもフランス語が話せるとは限りません。

下記の表は、21歳の時点で英語・フランス語の両言語に堪能なバイリンガルの割合を卒業した学校ごとに比較したもの。フレンチイマージョンを卒業してバイリンガルになれる人は、たった半数という結果です。

21歳時点での英仏バイリンガルの割合
英語プログラム6%
フレンチイマージョン56.8%
フレンチスクール(※)97.7%

参考データ:Statistics Canada
※完全にフランス語の公立学校。親がフランス語を母語とする人でないと入学できないことが多い。

しかも、バイリンガルのピークは学生時代であり、高校卒業と共に、徐々にフランス語を忘れてしまうというデータもあります。ということは、21歳時点でバイリンガルだった人も、仕事でフランス語を使うような30代になった頃には、すっかり忘れてしまっているかもしれません。

データ元:Statistics Canada

実際に私の周りでも、イマージョンに行っている当時はまだ喋れていたけど、今では簡単な日常会話すらできない、という話をよく耳にします。

フランス語求人の数を見ても分かるように、やはりカナダは、ケベック州などを除いて、ほとんどの地域が英語社会です。例えフレンチイマージョンに通ってフランス語を習得しても、卒業後に使う機会がなければ、忘れてしまうのも当然ですよね。

フレンチイマージョンは脱落者が多い

フレンチイマージョンの脱落者の多さも考慮しておくべき問題点です。

前回の記事では、フレンチイマ―ジョンに通う生徒の割合は、カナダ全土で約10%だとご紹介しました。でも、これは幼稚園から高校までの全体の割合であり、高学年になればなるほど、生徒数は少なくなります。

例えば、トロントエリア(GTA)では、グレート8までに、フレンチイマージョンの生徒の半分以上が英語プログラムに移るそうです。

参考記事:Ontario schools struggle to keep students in French immersion

半分以上という数字は驚きですよね。

フレンチイマ―ジョンを諦めた理由は、引っ越し先で、フレンチイマ―ジョンに入れなかったという、本人の意図に沿わない理由もありますが、その多くが、フランス語に興味を持てなかったり、他の科目の成績に影響が出たため、途中で脱落する生徒です。また、大学進学を控えた時期になると、英語系大学への進学に備えるために、英語プログラムに編入する生徒もいます。

幼稚園から始まるアーリーイマージョンは親の希望で入学させたものの、結局は本人の意志が伴わず、途中で進路変更。英語プログラムへの編入はいつでもできるとはいえ、クラスメートや学校は変わってしまいます。

「ダメだったら途中で英語プログラムに編入させればいい」

そう簡単に考えてしまっては、子供に可哀そうな気がします。特に仲良しグループが形成される女の子にとっては、環境の変化が大きなストレスになりかねません。また、毎年何人かのクラスメートが英語プログラムに移ってしまって、悲しいという話も聞きます。

将来の可能性を広げてあげるのが親の役目。最初から挑戦させないのは可哀そう───、そんな気持ちもありますが、どちらが子供のためなんでしょうね・・。難しいところです。

フレンチイマージョンだからと言って、学力が高くなるわけではない

前回の記事で紹介したように、フレンチイマ―ジョンの子供たちのほうが英語プログラムの生徒に比べて、平均学力が高いという研究結果がありました。入学を後押ししてくれる大きなメリットではありますが、この研究結果の背景を考えると、必ずしもフレンチイマ―ジョンが子供の学力向上につながるとは言えません。

というのも、フレンチイマージョンの平均学力が高い理由は大きく2つ。

一つ目が、そもそも、フレンチイマージョンに入れる家庭は、教育意識が高かったり、裕福な家庭が多いという事実です。教育熱心だからこそ、バイリンガル教育を望んでいるわけで、フランス語以外の科目にも熱心に取り組んでいる家庭が多いことが伺えます。

二つ目が、フレンチイマージョンには、スペシャルサポートが必要な子供たちや、ESLサポートが必要な子供たちの割合が、英語プログラムに比べて、圧倒的に少ないという点です。

フレンチイマ―ジョンには、スペシャルケア(ギフテッドを含む)が出来るリソースが英語プログラムに比べて少なく、政府や州が掲げる「平等な教育の機会」は英語プログラムでないと実現が難しいそうです。

カナダは移民の国ですが、ここ数年は特に多くの難民を受け入れていますよね。2016年には過去最大となる約4万7千人もの難民を受け入れ、2017年も3万人以上受け入れました。シリア難民の受け入れの際は、子供のいる家庭から優先して受け入れられましたが、そんな難民の子供たちも、ほとんどが英語プログラムに入るわけです。

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こういった背景を考えると、「フレンチイマージョンに入れたほうが学力が向上する」というわけではなく、「英語プログラムは個人間の学力にばらつきがある一方、フレンチイマージョンは子供の学力が一定水準に保たれている」というべきかもしれません。

実際に、学力に基づいた学校ランキングを見てみても、必ずしもフレンチイマ―ジョンの学校が上位を占めるわけではありません。

オンタリオ州とブリティッシュコロンビア州の学校成績ランキングより、フレンチイマ―ジョンの学校に水色で色付けしてみましたが、このようにランキング上位のほとんどが、英語プログラムの学校ばかり。

これは、フレンチイマージョンの生徒の割合がBC州で9.6%、ON州で12.3%だったことを考えても、ほぼ同じ比率ですよね。

やはり、フレンチイマ―ジョンだから、英語プログラムだからと、言語プログラムによって学力に大きな差が出るわけではなく、学力が伸びるかは、学校や本人の頑張り次第だと言えます。

第3言語以上の習得でも問題ない

ここまでは、フレンチイマージョンについてネガティブな面ばかり述べましたが、最後はポジティブな点も。

日本人の親をもつ家庭の場合、フレンチイマージョンに入れると、英語、日本語、フランス語と、3か国語、もしくは3か国語以上の言語習得に挑戦することになると思います。そうなると、結局、どの言語も中途半端になってしまわないか───そんな不安を抱える方も多いのではないでしょうか?

しかし、フレンチイマ―ジョンは、英・仏以外の言語を母国語とする移民の生徒にも推奨されているプログラムです。

そして、実際にその後の追跡調査でも、移民の子供たちのほうが、フランス語に対してモチベーションが高く、英語を母国語とする生徒よりも、フランス語の習得能力が高いという結果が出ています。

参考記事:Immigrants Outperform Canadian-Born Groups in French Immersion

これは、移民家庭のモチベーションの高さだけでなく、多言語習得者ほど、脳の情報処理速度が速いと言われることとも関係しているようです。

母国語が英語でない分、低学年のうちほど英語能力は劣りますが、それも高学年になるにしたがって、徐々に追いついてくるそうです。

ただし。

学校任せ、子供任せで勝手に多言語を習得してくれるわけではありません。

約半数の子供たちがフレンチイマ―ジョンを諦めて、英語プログラムに編入するという状況を考えても、そこに至るまでは、本人はもちろん、家庭も、相当な努力を要するのは確か。英語・フランス語を母国語とする家庭以上に苦労する覚悟が必要です。

実際、フレンチイマ―ジョンに入る移民の子供たちはやはり少数派。母国語と英語の二か国語だけでも精一杯だと感じる家庭が多いからだそうです。

終わりに

以上、カナダのフレンチイマ―ジョンについて、入学させる前に考えておきたい点をご紹介しました。

フレンチイマージョンに入れることのメリットは大きいですが、フランス語習得の意義や問題点、言語習得の大変さも十分に考慮しなければなりません。

MiddleやLate Immersionであれば、子供本人の意思を尊重することができますが、Early Immersionは、ほぼ親次第。親にとっては本当に難しい選択を迫られますね。

ちなみに、我が家は上の子は4歳でカナダ移住したこともあり、迷わず英語プログラムを選択しました。カナダ生まれの下の子は来年9月から幼稚園に通うことになりますが、まだ1年くらいは悩み続けそうです・・。

今回の内容がお子さんの学校選びの参考になれば幸いです。長い記事に最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!

改めて、前半の記事はこちらです。
カナダ公立学校のフレンチイマージョン①プログラム内容やメリットは?

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