「おじいちゃんやおばあぁちゃんたちが元気!」
カナダに来てから驚いたことの一つがこれでした。白髪のシニア世代が、背筋もピーンと、生き生きと社会で活躍しているのです。日本は世界トップクラスの健康でご長寿な国だと思っていましたが、その事実を疑いたくなるくらいに。
今回は、2018年に発表された世界の平均寿命と健康寿命ランキングをご紹介するとともに、数字だけでは見えてこないカナダのアクティブな高齢者をご紹介したいと思います。
この記事の目次
世界の平均寿命
厚生労働省が2018年に発表したデータでは、女性の平均寿命は87.26歳で世界2位、男性が81.09歳で世界3位になっています。ここ数年は香港に1位の座を奪われているものの、平均寿命そのものは年々延びているそう。日本は世界トップクラスのご長寿国であることは間違いありませんね。
また、カナダの平均寿命は女性が83.9歳、男性が79.8歳となっています。他の先進国とだいたい同じくらいの平均寿命でしょうか。ちなみに、お隣アメリカと比べると、寿命は3歳ほど長め。これはアメリカより肥満率が低いことが関係していると言われています。
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世界の健康寿命ランキング
最近では、『健康寿命』という言葉がよく使われるようになりました。
WHOの定義では、健康寿命とは日常生活に介護を必要とせず、自立した生活が送れる生存期間とされています。要介護1~5にあたる期間を除いた平均寿命とも言えます。
上記ランキングはWHOが2018年に発表したものですが、健康寿命1位の国は、76.2歳でシンガポール。続いて日本が74.8歳で2位となっています。
そして、日常生活に支障が出てしまう、いわゆる「不健康な期間」は9.4年。日本は高齢者に対する過剰な延命治療が問題視されることが多いですが、他国に比べて極端に長いというわけでもありませんね。カナダと比べても、0.2年短いくらいです。
ちなみに、厚生労働省のデータと違って、WHOのデータでは香港が国として見なされないためランクインしていません。古いデータを見る限り、香港の健康寿命は日本よりも長いようです。
生涯現役!カナダのアクティブな高齢者
さて、平均寿命や健康寿命で見ると、日本とカナダでは、やはり日本のほうが高齢者が元気な国と言えますね。
でも、日本のおじいちゃんおばあちゃんと言うと、ちょっと腰が曲がっていて、家でテレビを見てのんびり暮らしている、そんなイメージではないでしょうか?!
そして、病院通いする人が非常に多く、病院はまるで老人同士のコミュニケーションの場にすらなっている。もちろん、全員が全員ではありませんが、少なくとも私の身近ではそんなお年寄りが多かったです。
その一方、カナダで見かけるシニア世代は、今回の調査結果の数字を疑ってしまうくらいに本当に元気でアクティブなんです。
例えば───
働いている人やボランティア活動する人が多い
カナダでは、高齢になっても働いている人が多いと感じます。
スーパーのレジ、バスの運転手、ジムのインストラクター、工事監督、オフィス・飲食店・保育園・学校・コミュニティセンター・図書館のスタッフなど、身近を見渡すだけででも、白髪で70代以上と思われる高齢者がごくごく当たり前に働いています。足腰の弱った80代の人だって珍しくありません。
ただ、65歳以上の高齢者の就業率を比較すると、日本が21.7%、カナダは19.8%と、数字上は若干日本の高齢者のほうが就業率が高め。数字上の就業率こそ日本の方が高いのに、なぜカナダのほうが高齢者の社会参加が目立つのか?
それは、ボランティア活動の参加率の違いかもしれません。
カナダでは図書館やコミュニティセンター、学校のような公共施設を始め、ご高齢のボランティアが活躍している場が多くあります。娘を地域のサポートセンターに預けた際も、90代のおばあちゃんがケアギバーとして担当してくれ、驚いたものです。立ち上がるのもしんどそうなおばあちゃんでしたが、それでも生き生きと、そしてにこやかに働いている姿を見ると、ボランティア活動が高齢者にとっての生きがいに繋がっていることを感じます。
日本の高齢者もボランティア活動に積極的な人も多いですが、日本とカナダで1日当たりのボランティア参加時間を比較すると、その差は歴然。
65歳以上の高齢者のボランティア参加時間は、カナダが年間230時間、1日にすると38分なのに対し、日本は1日たった9分です。カナダに限らず、他の欧米諸国でもボランティア活動は非常に活発なので、同じような結果になるのではないかと思います。
日本人高齢者はボランティアへの参加意思は高いものの、健康上の不安や、知人がいない、参加方法が分からないなどの理由で、参加に至らない人が多いそうです。そのため、自由時間を持て余し、テレビなどのメディア娯楽に費やす時間が一番長くなるという結果になっていました。
Working Seniors in Canada – Statistics Canada, 65歳以上の高齢者の5人に1人は働いている- シニアガイド, Volunteering and Older Adults – Volunteer Canada, 「社会生活基本調査」にみるボランティア活動の変化 – 齊藤 ゆか, 高齢者の生きがいはボランティア?高齢者の孤立死・孤独死対策には社会参加による生きがいが必須!とデータも実証 – みんなの介護
運動している人が多い
また、カナダでは運動している高齢者が多いと感じます。
日本はもともと運動不足の国。WHOの調査によると、日本人の33.8%が運動不足だそうです。一方、カナダの運動不足率は23.2%。10%以上の開きがあることからも、日頃の運動習慣には大きな違いがあることが分かります。
日本人は高齢になるとウォーキングを始める人が増えるとはいえ、やはりカナダのほうがスポーツをしてアクティブに過ごしている人が多い印象です。
ウォーキングやジョギングをしている人はもちろんですが、ジムに通いを日課にする人も多くいます。フィットネスクラブやスポーツジムでは、午前中はシニア向けのプログラムが多いこと!
また、先日のこと、シニア向け住宅から、全身バイクウエアに身を包み、スポーツタイプの自転車に乗って出かけるおじいちゃんを見かけました。颯爽と駆け抜けていく姿は、本当に若々しくて惚れ惚れするくらい。海外では老人ホームに入っていても、自分の部屋に引きこもる高齢者は少ないそうです。
外出する人が多い
ここまでの内容とも関連しますが、カナダの高齢者は外出を楽しんでいる人が非常に多い印象です。自宅やシニア向け住宅に関わらず、外に出てコミュニティの活動やアクティビティに積極的に参加したり、友人とスポーツやおしゃべりをしたり。人との関わりに積極的とも言えるかもしれません。
日中にカフェを訪れると、客層の中心はシニア世代です。特に田舎に行くほどカフェはおじいちゃんおばあちゃんの集会場のようになっています。日本で高齢者を多く見かける場所といえば、もっぱら病院の待合室でしたが、カナダではカフェかと、妙に感心したものです。
外出時間の長さはテレビの視聴時間にも表れています。
日本の高齢者は1日に約6時間、つまり一日の1/3は家にこもってテレビを見て過ごすそうです。一方、カナダは約4時間。この2時間の違いこそ、外出頻度や人との関わりの多さにも繋がっているのではないでしょうか。
A day in the life: How do older Canadians spend their time?, 70代男性は、日曜日には6時間以上テレビを見ている
腰が曲がっている人を見かけない
あと最後に、見た目の違いも。
カナダに関わらず海外全般で言えることだと思いますが、猫背で背骨が丸まっているおじいちゃん、おばぁちゃんがほとんどいません。同じ理由でか、シルバーカー(老人用手押し車)もあまり見かけません。
お年寄りになっても背筋がピンとして、はつらつと動いている人が多く、特に冬のコートやスノースーツを着込むような時期になると、後ろ姿から年齢を想像するのが難しくなるくらいです。連れている子供のお母さんかと思ったら、おばあちゃんだった、なんてこともよくあります。
これは人種による足腰の強さの違いもあるかもしれませんが、アジア人の中でも日本人は腰が曲がっている人が多いそう。その理由は、床に座る生活習慣、乳製品の摂取量をはじめとした食生活の違い、腰とお腹の筋力の弱さなどがあげられます。
乳製品と言えば、欧米のお年寄りは、チーズたっぷりのピザもごく当たり前に食べています。ポテトにチーズとグレービーソースがたっぷりかかったカナダのB級グルメ・プーティンだって美味しそうに食べてます。『胃がもたれる』なんてどこ吹く風!これが健康に悪いんだか、良いんだかはよくわかりませんが、、、カルシウムがたっぷり取れているのは間違いなさそうです。
まとめ
今回は世界の平均寿命や健康寿命ランキング、そして、カナダと日本の高齢者の違いをご紹介しました。統計上の数字をまとめると下記のようになります。
平均寿命 |
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健康寿命 |
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日常生活に支障が出る年数 |
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このように、数字上こそ日本が勝っていましたが、カナダの高齢者は、例え体が不自由になってもボランティア活動をしたり、外出して人との交流やスポーツを楽しんだりと、アクティブな老後を過ごしています。
これらは、平均寿命や健康寿命という統計上の数字にはなかなか表れないデータですよね。社会的な広い意味での『生涯現役』な人が多いと言えるのではないかと思います。私自身、老後も他人事でなくなりつつありますが、、、自分自身のことで考えても、ご長寿を目指すよりも、生涯現役なアクティブシニアを目指したいなぁと思います。
最後に、今回の記事を書くにあたり、日本と海外の高齢者事情を知りたくて、色々調べましたが、最も印象に残ったのが「欧米に寝たきり老人はいない」という本でした。カナダ在住であれど、老後は住み慣れた日本で暮らしたいと思っていた私ですが、日本の高齢者に対する医療事情を知ると、その思いが揺らぎそうなほど、色々と考えさせられました。
WEB上でも著者のインタビュー記事もあるので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。