「事件の容疑者は、A大学男子学生(24歳)」───「24歳で大学生って。。。」「浪人したのかな?ダサいなぁ。」
こんなニュースが流れると、世の中には手厳しい意見が飛び交う日本。確かに日本の大学は、18歳に入学し、22歳で卒業する人がほとんど。社会人入学も増えたとはいえ、まだまだ少数派です。
でも、世界で見ると、大学・大学院へ進学年齢は事情が異なります。
今回は、OECD(経済協力開発機構)が発表している教育統計より、世界各国の大学・大学院の平均進学年齢をご紹介したいと思います。
この記事の目次
世界の大学・大学院の入学年齢
大学進学年齢
日本の大学入学の平均年齢は18.3歳。ほとんどの人が、高校卒業と共に大学に進学しています。一方、海外を見てみると、OECD加盟国の大学入学平均年齢は、日本より約4歳高く、21.8歳です。
世界で最も平均年齢が高いのがスイスとデンマークで、それぞれ24.7歳。それにイスラエル24.6歳、フィンランド23.5歳が続きます。また、他の主要国を見ると、ニュージーランド23.4歳、オーストリア22.7歳、ドイツ22.0歳、イギリス21.0歳となっています。
大学院の進学年齢
日本の大学院入学年齢は、博士課程でも平均25.7歳。大学卒業後、ストレートで大学院に進学する人が多いことが伺えます。
一方、世界で見ると、修士課程で30歳前後。博士課程になると30歳超えの国ばかり。社会人経験をしてから、再び学生に戻り、学び始める人が多いことが分かります。
ちなみに、アメリカの大学入学年齢は、OECDのデータでは「データなし」となっています。しかし、修士(マスター)、博士(ドクター)の入学年齢は、それぞれ29.6歳、28.3歳と、他国同様に日本よりも高め。大学入学年齢も諸外国同様に高いと思われます。
大学進学年齢が遅い理由
日本に比べると、諸外国の大学進学年齢は高くなっていました。OECDの調査結果などから、その理由をあげてみると──
国によっては兵役がある
兵役の有無が進学年齢にも影響しています。
例えば、大学入学の平均年齢が高かったイスラエルやスイスも、皆兵制度が採用されています。イスラエルでは18歳から、スイスでは20歳から兵役が始まるそうですが、兵役を終えてから進学となると、入学年齢が24歳を過ぎてしまうのも納得です。
また、韓国も兵役がありますが、大学進学率が非常に高い学歴社会であるため、高校卒業と同時に兵役に就く人は少なめ。大学の進学年齢は18.9歳と、日本とほぼ同じです。
しかし、その後、大学卒業後から29歳までの間に兵役に就く人が多いそうで、大学の大学院の進学年齢は、修士で34.2歳、博士で37.9歳と、OECD平均よりも大幅に高くなっています。
高校卒業後に一旦働いて、お金を貯めてから進学する
日本では親のお金で進学する人が多いですよね。奨学金を利用するケースも多いですが、それも、教育費の一部や、1人暮らしの生活費に充てるくらいで、全額、自分で稼いだお金で進学するという人は非常に少ないように思います。
しかし、海外では自分で資金を稼いでから進学する人も多く、進学年齢が遅くなる傾向があるようです。
カナダに在住している私の身近にも、高校卒業後にまず一年くらい働いて、お金を貯めてから大学進学を目指すという人が何人もいます。しかし、周りもそれを否定的にとらえる人はおらず、選択肢の一つとして、ごく当たり前に受け入れられています。
年齢にとらわれない社会
冒頭にも述べましたが、24歳で大学生と聞くと、「浪人したのかな?」など、疑問を持たれるほど、「大学生は18歳~22歳」という強い固定観念がある日本。
社会人になってから大学に入ろうものなら、「18歳の若い子と混じって勉強?!ありえなーい」「サークルにそんなおじさん(おばさん)いらねー」そんな反応すらあります。同調圧力が強い日本ならではです。
一方、海外では進学や就職に対する「年齢の固定観念」がありません。
飛び級制度が一般的で、若くして大学に通う優秀な生徒もいます。カナダの天才少年、大川翔君も14歳でブリティッシュコロンビア大学に入学したことで話題になりました。
また、年齢が高くなってからも、新しいことにチャレンジする人が多くいます。
私自信、日本では外資系IT企業で働いていましたが、外国人の同僚たちが、全く違う道へ進むために仕事を辞めていく姿を目の当たりにしました。30代を過ぎて、歯科医や弁護士を目指すために仕事を辞めていった同僚もいます。二人ともそれぞれも、母国に帰り、何年もメディカルスクールやロースクールに通い、今では立派な歯科医、弁護士です。
当時の私は、勇気のある大胆な選択に驚いたものですが、当人はもちろんのこと、周囲の外国人たちの反応は「ああ、それはいい選択だね」と、ごく自然に受け入れてられていました。
現在はカナダに在住していますが、周りには50歳を過ぎて美容専門学校に通う人、60間近にして看護師を目指す人もいます。皆、年齢にとらわれることなく、やりたいと思ったことに挑戦していて、本当に勇気をもらいます。
卒業後の就職活動で年齢が足かせにならない
年齢が高くなってからの進学は、本人のチャレンジ精神がすごいだけでなく、年齢による上下関係が生まれにくく、年齢よりも実力で判断する社会だからこそ、可能でもあります。
就職活動では、これまで何を成し遂げたのか、何ができるのかが重要視され、体力勝負の仕事などでない限り、仕事が出来るかどうかの判断に「年齢情報」は全くの無意味。面接で年齢を聞くこと自体が禁止されている国もありますが、そもそも、聞く必要すらないのです。
むしろ、修士課程、博士課程を出ていないと、就職が難しかったり、給与面で大きく差が付くことも多いため、収入アップを目指し、社会人になってから修士課程や博士課程に進む人も多くいます。その分、大学院の入学年齢が高いという結果に繋がっています。
日本では高学歴を積んでも年齢制限に引っかかる
逆に、日本では就職活動においても、年齢差別が残りがちです。大学・大学院卒業時に年齢が高いと就職で苦労することが多く、公務員の就職試験ですら、未だ年齢制限が設けられています。
特に、文系の場合、院卒であることが、むしろ年齢的な面でデメリットになると言う話も聞きます。
夫の以前の職場にも、東大で博士号まで取得したという同僚がいましたが、年齢が「新卒枠」「第二新卒枠」から外れてしまうため、やはり就職活動では苦労したそうです。
まとめ
以上、世界各国の大学・大学院入学の平均年齢についてご紹介しました。
大学入学年齢はOECD加盟国平均21.8歳に対して、日本が18.3歳と、やはり諸外国のほうが入学年齢が高めです。世界の進学年齢が遅い理由には、下記の事情がありました。
- 徴兵制度
- 働いて、お金を貯めてから進学
- 年齢にとらわれない社会
- 卒業後の就職で年齢が足かせにならない
海外のように、「学生は22歳まで」という固定観念に縛られず、何歳からでも学びたいことや、やりたいことにチャレンジできたらいいですよね。年齢のせいで諦めてしまうのは本当にもったいないことです。
社会や企業の「年齢」に対する受け入れ姿勢を変えていくのは時間がかかるかもしれませんが、日本も社会人入学制度が整ってきていますし、今後は社会人になってから進学することが一般的になってくることと思います。大学も社会人を積極的に受け入れない限り、少子化で経営難ですしね。
また、海外留学を考えているけれど、年齢がネックになっている方がいたら、海外では年齢に対する固定観念はありません。年齢にとらわれず、ぜひ思い切ってやりたいことに挑戦してみてはいかがでしょうか。
参考情報:OECD.Stat