カナダ小学校に通う息子が「日本人だと知られたくない」と泣いた理由【追記あり】

更新 | 2018-06-12公開
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息子が4歳の時に家族でカナダに移住した我が家。

今年で移住も4年目、息子は現地の小学校ではGrade2、小学2年生です。

そんな彼の学校では、最近「ePals」を利用した授業が行われています。

ePALsとは

出典:http://www.epals.com

ePALsとは、世界各国の教育機関が参加している、オンラインの学級コミュニティです。

世界中の学校のクラスとつながって、一緒にビデオ授業を行ったり、メッセージをやり取りしたりすることができます。国際交流もはかれますし、異文化理解を深めることができて、とても良い授業だなと感心していました。

訪れたことのない国の子供たちとの交流

ePALsの授業では、まずお互いの国のこと、文化、習慣、地理、歴史などについて紹介しあったり、学んだことを発表しあったりしています。

ただ単に、本を読んだり、ビデオを見たりするだけでなく、実際にその国の生徒と関り合えることで、その国への興味が強く沸くんでしょうね。家に帰ってからも、自ら進んでYouTubeやインターネットで相手の国について調べたりもしていました。

これまで息子のクラスでは、アイルランドとガーナの学級とやり取りをしてきましたが、訪れたことのない国の生徒たちと、親交を深め、お互いの理解を深めていく様子は、見ていてとても微笑ましかったです。

韓国のePALクラスとの出来事

さて、5月に入り、息子のクラスでは韓国の学級とのePALsが新たに始まったようです。先週は韓国のePALへ送るEメールを作る宿題を持ち帰ってきました。

先生からは、「メッセージには、授業で学んだ韓国の習慣、文化、歴史などを踏まえて、自己紹介とePALへの質問をしよう」という指示付き。

その宿題に取り掛かっている時に、息子が何を書こうか悩んでいたので、軽い気持ちで、

「自己紹介だったら、『僕は4歳の時に日本からカナダに来たよ』って書いてみたら?」

とアドバイスしてみたのです。

───すると、急に暗い顔になった息子。一体どうしたのか、よくよく聞いてみると、

「それは嫌だ・・。だって、お母さん、知らないの?日本と韓国のこと。僕が日本人だって知られたくない。知られたら、ePALに嫌われるかもしれない・・・」

重たい口を開いて、ようやく話してくれた言葉がこれでした。

まさか、自分が日本人であることを言いたがらないなんて。しかも、その理由が、ePALに嫌われるかもしれない、だなんて・・・。

あまりに衝撃で、呆然としてしまいました。そして、息子が抱いた感情に、涙が出来てきました・・。

日本人だと知られたくないと感じた理由

でも一体どうして、こんな風に感じてしまったのか。

息子にその理由を聞いてみると、息子の学校には、韓国語を離せる韓国系カナダ人の先生がいるらしく、その先生から、韓国と日本の戦争のことを習った、とのこと。そして、韓国のePALたちからも、「日本人は韓国に来て、たくさんのトラを殺した」など、日本に対して色々と言われたそう。

「日本人は韓国に行っていいの?」

「日本人が韓国に行ったら、いじめられるよ」

とまで心配していました。

一体、どんな授業内容だったのか、授業で話された詳細な内容までは把握していません。でも、そこまで思い詰めるということは、日本人の息子にとっては相当衝撃的な内容だったのでは、と思います。そして、自分のバックグラウンドを話すのが怖くなってしまったようでした。

思い詰めてしまった息子を見て、悲しくて悲しくて、そして、どんな思いでその授業に参加していたんだろうと思うと、辛くて私まで泣けてきました。息子も涙、私も涙で、もうボロボロ。

「日本は戦争で悪いことをしてしまったけど、きちんと謝って、もうそんなことはしない国になってるよ。今は韓国と日本は仲良くしているよ。A(息子のこと)だって韓国にも2回遊びに行ったことがあるんだよ。その時も優しく接してくれる人ばっかりだったよ。今のピアノの先生だって、韓国人の先生だけど、すごく優しく教えてくれるでしょう?」

こう伝えると、息子は日本人が韓国に行っても大丈夫だということに驚くとともに、少しは安心した様子。泣きながら「良かった・・」と呟いていました。

でも、いざ、ePALへのメールの本文を考えようとすると、やっぱり自分のバックグラウンドは書きたがらない。どんなに、今はもう大丈夫だと伝えてもだめ。

息子にとっては、韓国人のePALに自分が日本人だと知られたら嫌われる、相当怖いことだったようです。

息子が実際に書いたメッセージ

私ともたくさん話し合ったのち、一人で考えたいと、部屋に入った彼。1時間以上経った頃に、ようやくメッセージを書き上げてきました。それがこの内容です。

Hi xxx. My name is xxx. I’m in grade 2 and my favorite subject is math. What is your favorite subject? I play the sports. One is soccer and the other is karate. I can play a instrument called a piano.I was born in Japan but after four years I moved to Canada. Before I moved to Canada I went to Korea, Australia, Hawaii and some other countries in the world

~中略~

I love kimchi and I like the color of the tree of your school. I once tried the game which you throw the stick or arrow to the bottle.

Do you play any sports? Do you play a instrument? Where were you born? Did you go to other countries? Did you visit other schools?

一部、個人情報は隠させていただきました。

決して日本の話題は触れないだろうと思っていましたが、出来上がったメッセージを読むと、日本で生まれたこと、4歳まで過ごしていたことを書いていました。勇気を出して書いたんだと思うと、これまた私は涙で。。。

でも、子供ながらに、嫌われないよう気を遣ったのでは?と思ったのが、

「韓国に行ったことがるよ。キムチが大好きだよ。君の学校の木の色が好きだよ。(韓国伝統の遊びとして授業で教わった)木の枝をボトルに投げるゲームをやったことがあるよ」

と、こんな内容を書いているところ。少しでも相手に好意を抱いてもらえるよう、彼なりに考えて書いたのではないかと思います。

また、日本以外の国にも訪れたことがあると書いて、日本の比重を少しでも軽くしたんじゃないか、とも思えてきます。

海外で暮らす日本人にとっての歴史授業

過去の事実を知ることはとても大切です。過去の歴史を学ぶことで、二度と残虐な出来事を繰り返さないよう教訓を得て、よりよい現代を作り上げていくことができます。

でも、子供は残酷です。物心がつかない子供たち、そして、思春期の多感な時期の子供たちは、ふとしたことがきっかけで、いじめや差別に発展します。

単一民族しかいない学校現場であれば、その歴史授業は何の弊害もないかもしれませんが、クラスルームに複数の民族がいる場合、歴史授業のせいで、いじめや差別につながる可能性もあります。

特に今回の息子のクラスのように、7-8歳という低年齢の場合は、物事を深く理解するのは難しく、まだまだ純粋な面もあります。歴史授業で学んだことを、過去の事実として理解するにとどまらず、個人間の感情にも持ち込んでしまいかねません。特に幼少期の歴史教育ほど、十分な配慮が必要なのではないかと思います。

息子の学校の先生たち、韓国側の先生たちには、過去の戦争、過去の事実を伝えた上で、日本は過去を謝罪し(否定意見の方も多いかもしれませんが)、今の両国が友好関係にあることを強調して伝えて欲しかったなと思います。

特に、ここカナダは、世界で初めて多民族主義を導入し、人種、民族、宗教などに関わらず、全ての人が平等であるとする国です。カナダの公立小学校で、ここまで自分のアイデンティティを否定したくなるような授業内容があったということが、悲しくてなりません。

その前日、たまたま学校に訪れる機会があったのですが、そこには、肌の色や目の色などを全く気にすることなく、全く壁もなく、生き生きと遊んでいる子供たちの姿がありました。息子はなんて良い環境で育っているんだろう。このまま大きくなっても、人種の壁を感じずに成長してほしいなぁと思った矢先の出来事です。

歴史は学ぶべきだけれど、色んな立場の子供たちや、多民族が入り混じる学校現場の場合、弊害もある。そう感じざるを得ません。

私自身、小学生の頃に同和教育を受けて、部落差別のことを知りましたが、クラスの子供たちも「部落ってどこ??」と聞いたり、変に意識したりしていました。「むしろ教えないほうが、みんな仲良くできるのに」と、授業に疑問を抱いたのをよく覚えています。クラスに部落出身の子がいたから、です。

クラスメートの反応

その後、担任の先生にも話を聞いてみましたが、確かに授業では日本と韓国の歴史問題に触れたこと、韓国人のePALたちが、年齢的にきちんと理解出来ていないままに、偏見的な意見を述べてしまったかもしれないことを教えてくれました。

その話を聞いて、息子のクラスメートのカナダ人たちは、日本人である息子に対して、そして、現在の日本に対して、一体どんな感情を抱いたのか。息子が日本人であることをひた隠しにしたがるくらいです。何かしら否定的な感情を抱いたのではないかと思ってしまいます。

先生は、生徒たちは、相手の発言をそのまま鵜呑みにすべきではないし、そもそも歴史問題の内容は子供たちにはまだ早すぎたかもしれない、とも話してくれましたが、日韓の問題がカナダの子供たちにも広がるのではと思うと、それもまた悲しいことです。

日本の教育は、あまりに自分たちの過去を綺麗事にし過ぎているのかもしれません。日本の過去の残虐な歴史は事実ですし、アジア諸国からの日本という「国」に対する反日感情はなくならないかもしれません。

それでも、個人同士の関係、特に未来ある子供たち同士は、反日・嫌韓といった偏見や壁を抱くことなく、成長してほしいと願います。

今回の出来事は、自分にとってショックが大きく、思うがままに、ずらずらと書き綴りましたが、嫌な気分になった方も、同意できない方も多いと思います。一個人の意見だと読み流していただければ、と思います。

追記(前回の内容から修正しました)

今回の記事を読んで、たくさんのメッセージをいただきました。心配してくださったり、ご自身の経験をもとにアドバイスもいただり、両国の事情や感情が分かる方からの貴重なメッセージもいただきました。胸が締め付けられる内容も多く、どうしたら良いのか、色々と考えさせられました。お時間を割いてメッセージをくださった方、本当にどうもありがとうございました。

前回、その後の出来事として追記していましたが、内容を修正させていただきます。

実際にお子さんが歴史問題からいじめや差別に発展した経験をされた方や、普段は仲が良いのに、喧嘩する度に歴史問題を引き合いにだされてしまうなどの体験談も聞き、私自身、『何も悪いことをしていない子供たちがなぜこんな目に合わなくてはいけないのか』と感情的になっており、前回の追記には偏った考え方で記述してしまった部分も多かったからです。せっかくブログに訪問してくださったのに、不快な感情を抱かせてしまった方には、心よりお詫び申し上げます。

頂いたメッセージや意見を読んで、自分なりに考えたことを改めてまとめたいと思います。本文と重複する内容もありますが、良かったら読んでいただけたら嬉しいです。

歴史授業について

本文中にも記載しましたが、過去の事実を伝える教育は絶対に必要だと思います。それによってショックを受けたり、辛い感情を抱くこともあると思いますが、教訓として受け止め、二度と過ちを繰り返さないためにも、必ず教える必要はあると思います。もちろんそれは、反日教育や反米教育などとも呼ぶべきものではなく、必要な歴史の授業です。

でも、過去の歴史を学ぶことで、そこから、今を生きている子供たちが、個人的に攻撃対象になったり、いじめられるのは、あってはならないことだと思います。

逆に、日本人が、原爆を落とされたからといって、アメリカ人個人に対して、原爆を落としたことに対し謝罪を求めるのもおかしいですし、過去の歴史や政治のせいで、アメリカ人個人を憎んだり、否定的な感情を抱くのも、全くのお門違いです。日韓の歴史問題も同じように、個人間の関係には持ち込むべき感情ではないと思います。

ただ、大人同士の会話と違って、子供たちの通う学校現場では、様々なきっかけで、いじめや個人攻撃になり得てしまいます。低学年のうちは、配慮という言葉とは無縁に、ストレートに物申して相手を傷つけてしまいますし、中高校生になると、自殺まで追い込むほどにエスカレートしたいじめだって起こります。

今回実際に体験談を送ってくださった方のメッセージを読んで、やはり海外の学校現場では、歴史授業が日本人差別やいじめに発展するケースがあることを思い知らされました。

でも、そのたびに、個人攻撃をしてきた相手を、「民族」を理由に憎むようなことはしてほしくないですし、ましてや、国や民族全体を否定するような嫌韓感情を抱くようなことは絶対あってはならないと思います。

息子の感情

私自身、日本は大好きです。でも、日本が完全無欠の素晴らしい国だとは全く思っていません。過去の歴史も、保身に走ってばかりの政治や政策も、尊敬できるものばかりではありません。子供にも、日本人だからといって、『日本は素晴らしい国、すごい国』だとは思い込んでほしくないので、日本の悪い側面も伝えています。だからこそ、私たち家族は日本を離れ、カナダに来たんだという事実も含め。

それでも、息子が好きになるのは日本のアニメやおもちゃばかり。カナダで育っているのに性格は日本人の国民性そのもの。住んでいる国は違っていても、やっぱり日本人のアイデンティティーを持っているんだなぁと思い知らされます。

息子は今回の件があった以降も、どうやら、日本が大好きという感情は変わらないようです。日本に対して誇りも持ち続けてくれているようです。ただ、それでも、『知らない人に自分が日本人だと言うと、相手に嫌われるかもしれない』という不安を感じています。相手の人種、民族など関係なしに、です。

(特に、韓国人ePALからのメールの返事が無いままだったので、『日本人だと告げたせいで、返事が来ないんだ』と変に心配してしまっているところがあります。学年も終わり、もうePAL授業が終了してしまったのがとても残念です)

そんな息子の心の格闘を見ていると、過去の歴史は事実として受け止め、反省しつつも、個人間はそれを乗り越えて仲良くできること、過去の歴史のせいで自分が嫌われることはないことを、強く伝えていかなければ、と思います。

幸い、息子自身は今回の件でクラスメートからいじめられたり、個人的に攻撃されることはありませんでした。歴史問題はあれど、友だち同士の関係までは崩れないことを身をもって経験できたのは本当に幸せなことだったと思います。

日本人の子供たちが海外で暮らすということ

歴史授業はもちろん行うべきです。残虐な戦争の話題を避けるべき、とは一切思いません。でも、日本人がマイノリティとなる海外で暮らしている以上、過去の日本の過ちを、何の悪いこともしていない子供たちが矢面に立って、受け止めていかなくてはならない場面もあります。

子供たちは強くならなくてはなりません。『海外で暮らしているせいで』と、そのことを申し訳なくも思いますし、親として守ってあげなくては、とも思います。でも、その方向を間違えてはいけませんね。

今回の息子の一件も含め、多民族が暮らす海外だからこそ経験できたこと、悲しい感情を抱いたことをきっかけに、日本の子供たち以上に平和な世界の必要性を肌で感じて、正しい歴史を学び、戦争や残酷な出来事を二度と繰り返さないために活かしてほしいと思います。

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