息子が4歳の頃にカナダ移住し、早3年。今では彼も小学校2年生(Grade2)になりました。
この3年間、カナダの教育を目の当たりにしてきた私ですが、とにかく日本の小学校と違って、
読書への力の入れ方がすごい!
勉強量こそ、日本の小学生のほうが多いと思いますが、読書の量はカナダの小学生のほうが断然多い印象です。
今回はカナダの幼稚園生、そして、小学生たちの読書事情をご紹介です。
学校での「読書」時間が多い
まず、カナダの学校では、読書の時間が多く取られています。
そもそも、カナダの小学校は、低学年のうちは教科書がありません。そのため、国語の時間では、同じテーマの本をそれぞれが読み(難易度は様々)、その後、その本で学んだことについて、意見を出し合う、という授業が行われています。
また、勉強という意味合いだけでなく、ストーリーを楽しむための読書時間が設けられているのも特徴です。
多くの学校で、幼稚園の頃から一人の読書時間が設けられており、一人読書の時間になると、教室内の本棚から、生徒それぞれが興味のある本を手に取り、読み進めていきます。
ジャンルも、フィクションからノンフィクションまで様々。また、同じクラスの中でも、生徒それぞれのリーディング力が異なるので、10ページくらいの簡単な本を読んでいる子もいれば、高学年向けの小説のような本を読んでいる子供もいます。
さらに、一日の読書量も多め。
うちの子供も、幼稚園児クラスの頃は、ページ数の少ない本を毎日10冊ほど読み、小学2年生になった今は下記のような30ページほどある本を毎日2冊ほど読んでいるそうです。
実際に、世界主要国の学校のカリキュラム比較をすると、やはり、カナダはリーディングやライティングと言った国語の授業割合が世界で6番目に高いという結果でした。
一方、日本の学校に注目すると、国語時間の割合はOECD平均を下回っています。
日本では、家庭科、音楽、道徳など、必須科目が多いのがその理由だと思いますが、そもそも、国語の授業でも教科書にそって学習するため、学校での読書時間は「勉強」の意味合いが強いものとなっています。
自分の好きな本を自由に読める時間は、週1回の図書の時間。最近では、毎朝10分間の読書時間を設ける学校も増えてきてはいますが、カナダの学校に比べると、楽しむための読書時間はまだまだ少いのではないでしょうか。
学校の宿題も必ず読書
学校の授業だけでなく、日々の宿題でも、やはり読書が重視されています。
毎日の宿題は、1~2冊の本を読むのが基本。
それに加えて、算数や国語などの宿題が少し付随するといった感じです。カナダの学校は、学校や先生によって学習方針がかなり異なるのですが、多くの先生が、読書だけは宿題に取り入れていると思います。
読書の本は、学校の図書館で借りた本や、家にある好きな本など、学校のリーディング授業と同様に、毎日様々なストーリーを読み進めています。
日本の小学生も、毎日の宿題に読書が課されることが多いですが、やっぱり読むのは国語の教科書ですよね。学校でも家でも、同じストーリーを何度も繰り返して読むことは国語力には非常に大切ですが、ストーリーを読んで楽しむという「読書の本質」とは異なるもの。
そういった意味では、学校でのリーディングの授業にしろ、毎日の宿題にしろ、カナダの子供たちのほうが小さい頃から読書を楽しむ習慣が身についていると言えると思います。
カナダ小学校の宿題紹介!休みは宿題無し?息子の学校は基本コレだけ。
読解レベル分けされた児童書が豊富
でも、このように読書を楽しむ習慣が身につけられるのは、子供が自分で読み進められる本が豊富にあってこそ。
私が子供に日本語の本を探すときに、一番困るのがこの点です。
今の学年、そして今の子供のレベルにぴったりの本がなかなか見つからないのです。英語のLexile表示のように、日本の児童書にも難易度表示があると助かるのですが・・。これは海外在住のため、本を手に取って中身をしっかり確認できないからこそ、感じる問題なのかもしれませんね。
習った漢字が出てくるような本が望ましいので、学年別に出ている本を読ませたりもしていますが、全く種類がそろいません。
その点、英語の場合、ほぼ全ての本にLexileという難易度レベルや、対象年齢が分かるようになっているので、自分のレベルにあった本を読み進めることが可能です。
また、小さい子供たちが自分で読み進められるようなレベル別リーディングの本も充実しています。
レベル別リーディングは主に4~8歳向けで、読書力に合わせて、レベルが4~5段階に分かれています。
例えば、我が家にあるこの本。
レベルが1、2、3と分かれているのですが、この通りレベルに応じて、単語数も増え、難しい語彙も増えていきます。
レベル別リーディングの本がスラスラ読めるようになると、次に手にするのがチャプターブックです。
チャプターブックは文庫本のような本で、このように絵もほとんどなく、ページ数も100ページ前後に増えます。
こういったレベル別リーディング本とチャプターブックのおかげで、英語圏の子供たちは、今の自分の読書力にあった本を簡単に見つけることができます。
しかも、その本の種類は膨大!
本屋さんにいけば、レベル別リーディング本のコーナーが必ずありますし、我が家がよく行く本屋さんでは、レベル別リーディングの本が棚3つ分もズラリと並んでいます。学校や公共の図書館でも同様です。
本のストーリーは、人気のアニメシリーズもあれば、有名絵本のキャラクターもの、科学や生物などを紹介するフィクションなど、多岐にわたり、自分のレベルに合った本を選べるだけでなく、自分の興味が沸く1冊を選ぶことができるのです。
また、最近では、レベル別リーディング本だけでなく、パソコンやスマホで使うリーディング教材も浸透しています。
うちの子供が通っている学校では、「RAZ-Kids」というオンラインのリーディング教材を使っているのですが、これがパソコン・スマホのメリットを活かした非常に良いシステムになっています。
単に読書するだけでなく、①リスニング、②自分で音読、③本の理解度チェック問題、という3段階なので、しっかり読解力が鍛えられますし、用意されている本のレベルもとても細かく、29段階に分かれています。
一つのレベルごとに20-30冊ほどの本が用意されていて、全ての本を全て読み終わると、次のレベルに昇給できるようになっています。自分の興味のある本を読むというコンセプトとは異なるものの、読書教材としては本当に素晴らしいものです。
家庭での読み聞かせ時間が長い
学校以外にも、家庭での読み聞かせ時間もとても多くなっています。
3-5歳児への読み聞かせ時間を日本とカナダで比較すると、日本では毎日読み聞かせるという家庭は25%。一方、カナダでは65%もの家庭が毎日子供に読み聞かせています。
確かに、カナダの家庭では、寝る前の読み聞かせがとても一般的。欧米の子供たちは、小さなころから一人部屋で寝るため、読み聞かせが寝かしつけの一環として習慣化されているのだと思います。
寝る前の読み聞かせは、子供の思考力や想像力などの向上に良いだけでなく、寝る前に静かなベッドタイムを設けることで、寝入りも早くなるという一石二鳥の効果があって、ぜひ取り入れたい習慣です。
図書館のサービスが充実している
さらに、図書館のサービスも充実しています。
図書館では、子供向けの読み聞かせや、リーディングクラブなど、様々な取り組みが無料で行われていますし、ipadやパソコンが数多く設置されていて、幼児のうちからゲーム性のあるリーディングアプリを利用して読書に親しむこともできます。
また、本の貸し出し点数も無制限。もしくは、制限があっても30冊前後と、一度に大量の本を借りることが出来るようになっています。
日本の図書館だと、貸し出し点数はだいたい10冊前後。20冊以上借りられるところはとても珍しかったので、カナダに来て貸出点数の多さには驚きました。
実際に、どれくらいの本を借りていくのか?
利用者を見ていると、子供ほど大量に借りていきます。特に絵本ともなると、次々に気になった本をカゴにいれていき、30冊以上借りていく親子も珍しくありません。
確かに、毎日の寝かしつけに3冊読んでいれば、1週間で21冊は必要になってきますもんね。図書館のサービスも、小さいころからの読書習慣の向上に非常に貢献しているわけです。
まとめ
以上、カナダの子供たちの読書事情について、日本とは異なっているなと感じた点をまとめてみました。
ご紹介したようにカナダの子供たちは、
- 学校の授業で日々読書を行い、
- 毎日の宿題も読書を行い、
- 膨大な量のレベル別リーディングで自分のレベル・興味のある本に出会い、
- 家庭でも毎日読み聞かせを行い、
- 図書館に行けば、大量の本を借りられる制度がある
このように、とにかく読書が推進されている環境にいるわけです。
実際、子供たちは読書習慣が身についているようで、出かける時は本を一冊持っていく子供も多いですし、空き時間に読書をしている子もよく見かけます。
机上での勉強時間こそ、日本や韓国のような競争社会には勝てませんが、小さな頃からの読書習慣こそが、OECDが実施している世界学力ランキングでも読解力が世界2位になる秘訣なのではないでしょうか。
国別の学力ランキングは下記の記事で紹介しているので、良かったらあわせてご覧ください。
海外の夏休みは2か月以上あるのに宿題ゼロ。それでも学力が落ちない教育事情とは?
長くなってしまいましたが、最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!
参考記事:
Education at a glance 2017 – OECD
3∼5歳児家庭の 読み聞かせの現状 – ベネッセ教育総合研究所