学校内で盗難が起きたら──??
日本だと、盗んだ生徒に正直に申し出るように促し、盗んだものを持ち主に返し、謝罪させる、こういった対応が一般的ではないでしょうか。
でも、欧米の学校では大きく事情が異なります。カナダの学校に通っている息子の学校で起きた2つの事例、そして先生ですら学校で盗難にあうという事例とともに、学校の対応、親が取るべき対応をご紹介しましょう。
事件①:バックパックのキーホルダーが無くなった!
以前、息子のバックパックに付けていたお気に入りのLEGOのキーホルダーが、立て続けに2回も無くなることがありました。本人曰く、学校で探しても見つからないとのこと。もちろん簡単に外れるようなものではありません。
もしかしたら盗まれているのかも?と思い、先生宛にメモ書きで知らせてみたのですが、それに対する先生からの返答はこのような内容でした。
無くなって困るようなものは学校に持ってこないこと。持ってくるなら、しっかり記名して、自己責任で管理しましょう。
つまり、例え学校で盗みがあったとしても、それは取られた子供の責任だと言うわけです。
息子のキーホルダーの一件だけでなく、他の学校のママさんたちに聞いても、可愛い文房具を持って行ったら盗まれた、なんて話を聞きますが、いずれのケースでも、学校側の対応は息子の件と全く同じ。犯人捜しをするのではなく、取られないように自己責任が求められるそうです。
事件②:注文していたピザが盗まれた!
これは息子の仲良しクラスメイトA君のお話。下記記事でもご紹介した通り、カナダのランチタイムには、希望制の給食制度があります。
➡関連記事:カナダ学校ランチ事情!給食は無いけど「ホットランチ」が注文できる。メニューや制度内容をご紹介。
そんなホットランチでピザが注文できる日のこと。注文していた子供は、先生から一人一人、ピザを受け取り、席に着いて食べ始めるのですが、その日A君は、ピザを受け取ると、自分の席にピザを置いたまま、まずお手洗いに席を立ちました。
でも、お手洗いから戻ると、ピザが無い!絶対に席に置いたはずなのに!!先生にピザが無くなったことを告げましたが、先生の対応は、ここでも驚かされるものでした。
なんて可哀そうな・・。次からはA君のピザの箱には名前を書いておくからね。
先生は同情してくれるものの、周りの子供たちに「A君のピザ知らない?」と聞きまわることはありませんでした。確かに、その事件以降、A君のピザの箱には毎回先生が記名してくれました。そのおかげもあり、ピザが盗まれることは無くなったのですが・・。
自己責任を問う一方で、野放しになる盗難
息子のキーホルダー、A君のピザ、いずれのケースでも納得がいかないのは、自己責任という建前のもと、盗みが野放しにされていること。
盗んだ生徒に対してお咎めなしとなると、『先生から問いたださることもないし、バレないから平気』と高を括って、ますます同じような盗みを働いてしまうかもしれません。周りのクラスメイトたちも、『盗んでも怒られないんだ』と、変に捉える子もいるかもしれない。
それに、自己責任にも限界があります。いくら持ち物に記名しても、いくら必要最低限の持ち物でも、防げない盗みは出てくるでしょう。
先生さえも盗まれる?!
でも、学校内で盗難に合うのは、生徒たちだけではないようです。驚くことに、先生たちですら盗難の被害者になっているのです。
アメリカを中心に英語圏で大人気の投稿サイトRedditの教師向けページを眺めていると、見つかるわ、見つかるわ、学校内での盗みに関する先生同士の相談や愚痴の数々・・・
例えば、この投稿。
教師生活2年目がまもなく終わろうとしている最中、今日、財布からお金を盗まれ、とても動揺しています。
そもそも、私が愚かだったのですが、生徒たちがアフタースクールプログラム(※注①)でクラスに残っていたにも関わらず、自分のデスクに財布を置いたまま、ミーティングで席を外してしまったのです。ミーティングから戻ると、私の財布は中身が無くなった状態で、カバンの上に置かれていました。
まずムカついたのが、アフタースクールプログラムの監督をしている先生たちが謝ってくれないこと。そのクラスルームはほとんど管理されておらず、そのせいでこんな盗難が起きたのは明らかです。
お金を残して席を立ったことは、私自身の責任です。本当に責任感のない行動を取ってしまいました。でも、怒りよりも何よりも、この10か月間ずっと接してきた教え子に盗まれたことが悲しくて仕方ありません。
(※注①)アフタースクールプログラムとは?:北米の学校では、アフタースクールプログラムと呼ばれる学童保育のようなものが学校内で行われることが多くなっています。学童保育は、通常の担任の先生ではなく、学童保育の先生が別に付き、生徒を監督指導しています。詳しくはこちらの記事にて➡カナダ小学校の学童保育プログラムとは?料金、時間、内容などをご紹介
投稿者の国名は記載されていませんが、幼稚園をKindergartenと呼んでいたりするので、おそらくアメリカかカナダではないかと思います。
この投稿内容からも、盗難事件は第一に自己責任であり、犯人捜しはしないといった、息子の学校での対応と同じであることが分かりますね。しかも、この盗みが行われた際は、クラス内に、アフタースクールプログラムの先生がいる最中です。
にも関わらず、その時クラスの監督責任を負っていた先生は謝ることもなく、そして、盗んだ生徒が咎められることもなく、机の上に財布を置いていたことが諸悪の根源とされることに、文化の違いを感じてしょうがありません・・。
この投稿に対する他の教師たちの意見も、非常に興味深いものでした。
このように、先生が盗難にあう事例は、決して珍しいことではないようです。そして、いずれのケースでも犯人捜しはしていません。ジャイアント鉛筆なんて、ちょっと探せば簡単に見つかると思うのですが・・。先生たちは盗まれたことを嘆きながらも、自己責任だとして、次回からは細心の注意を払っています。
先生は教科を教えるのみ、しつけは家庭の役目
教え子に物を盗られて悲しむくらいなら、クラス全体に盗みがダメなことを諭し、子供たちを正しい方向に導いて欲しいと思ってしまいますよね。
しかし、日本と違って、カナダでは先生の役割は限定的。『教師の仕事は教科を教えるのみ。しつけは家庭の役目』というような明確な責任範囲があるため、先生側は盗みに対する指導はできないようです。
そこには先生側にも大きな葛藤があるのかもしれませんね・・。
まとめ
今回は学校での盗難について、息子の通うカナダの小学校での事例や、英語圏の先生の意見などをご紹介しました。ここまでの内容をまとめると、
- カナダやアメリカの学校では、学校での盗難は盗った側よりも、盗られた側の責任
- 持ち物には記名し、盗られて困るものは持ち込まない
- 先生の仕事は科目を教えるだけ。躾はしないため、盗みを咎めることもない
こんな感じでしょうか。もちろん、学校や先生によっても対応は変わってくるとは思いますが、Redditの投稿を見ている限り、だいたい似たようなものだと思います。カナダの学校教育は良い面も多くとても満足しているのですが、盗みに対する対応ばかりは悶々としてしまいます。
自己責任が強く求められる欧米社会。日本人にとっては納得いかない面もありますが、カナダで子育てする以上、従っていかなくては・・ですね。親自身も記名を徹底し、取られて困るものは持って行かないことや、大切な物を置きっぱなしにしないことなどを教えていかなくてはなりませんね。そして何より、「人の物を盗んではいけない」という人として基本的なことを、改めて家庭で教え込まなくては、と思わされます。
なんだかモヤモヤ、すっきりしない記事になってしまいましたが、、、最後までお付き合いくださった方、ありがとうございます!
→追記:この記事に対して、こんな投稿もいただきました。やはり欧米全体、同じような方針なのかもしれませんね。
これと同じことをイギリス人も言ってた。盗むことを悪いとする教育はなく、盗まれることは自己責任。
カナダの学校で物が盗まれた!先生の対応はこう。海外では先生ですら生徒に盗まれる?! https://t.co/Zb42gEmUtf @im_happybananaさんから
— eee (@mauna_loa) 2017年10月4日