前回はカナダのビジネス誌Money Senseが発表した「カナダの住みやすい都市ランキング」をご紹介しましたが、今回は新移民向けの住みやすい都市ランキングをご紹介です。
住みやすい都市ランキングが住宅価格や治安、富裕度、雇用、気候、医療アクセス、交通アクセス、スポート芸術振興など、都市を総合的に評価したものだったのに対し、新移民向けのランキングでは下記の指標に重点が置かれています。
- 失業率
- 世帯収入
- 英語/フランス語以外を母国語とする人の割合
- 2ベッドルームアパート(2LDK)の家賃
- 空き家率
- 治安
- 交通アクセスの良さ(車が無くても通勤可能か)
カナダで働いて行くにあたり、仕事の見つけやすさや収入水準などは、とても重要な指標ですよね。これからカナダに移住する人だけでなく、ワーキングホリデーなど長期滞在する方にとっても、参考になるデータだと思います。
1位:オタワ(オンタリオ州)
都市の総合ランキングでも1位だった首都オタワ(Ottawa)が、移民向けランキングでも1位に。これは2年連続の1位です。
住宅価格がトロントやバンクーバーのような高騰をしておらず、賃貸価格も低め。雇用面でも、ハイテク企業やIT企業が多く集まるエリアがあることから、失業率も低く、世帯収入も高めになっています。
大きな都市としては、治安も良く、犯罪件数も同規模都市に比べて少なめ。移民の割合はトロントやバンクーバーに比べると低めですが、5人に1人は英語・フランス語以外を母国語としており、カナダ全土の中ではマルチカルチャーが進んでいる街です。
また、公共交通機関または、徒歩・自転車で通勤する人も多いことから、車が無くても生活可能なエリアが多いと言えます。
- 総合ランキング:1位
- 人口:974,701
- 人口増加率(2012→2017):5.5%
- 失業率: 5.0%
- 世帯収入(中央値): $91,122
- 平均住宅価格:$481,223
- 2BRアパートの平均家賃: $1,204
- 賃貸空室率:3.0%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 21.0%
- 1000人当たりの犯罪件数: 3,635/100,000
- 公共交通機関・徒歩・自転車で通勤する人の割合:19.5%
2位:ウォータールー(オンタリオ州)
By Giligone (My own work using a Sony a 200) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons
同ランキングで前年3位だったオンタリオ州のウォータールー(Waterloo)が2位です。
ウォータールーはオンタリオ州南西部に位置し、ブラックベリーの本社があることでも知られる、ハイテク企業が集まる街として有名です。ハイテク産業以外にも、金融機関、教育機関の求人も充実しており、失業率も低く、給与水準も高いことから、特に雇用面においては、住みやすいエリアだと言えます。
また、4人に1人が英語・フランス語以外を母語とし、特にアジア系が多く住んでいます。
- 総合ランキング:30位
- 人口:109,532
- 人口増加率(2012→2017):5.4%
- 失業率: 5.4%
- 世帯収入(中央値): $90,726
- 平均住宅価格:$467,659
- 2BRアパートの平均家賃: $1,098
- 賃貸空室率:1.4%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 25.1%
- 1000人当たりの犯罪件数: 4,986/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:8.5%
3位:レジャイナ(サスカチェワン州)
By Grahampurse (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons
サスカチェワン州の州都であるレジャイナが3位です。
レジャイナは、ガス、オイル、ウランなどの天然資源が豊富で、関連産業が活発なことから、雇用状況が良い都市です。雇用の多さなどを理由に人口増加が進んでおり、たった5年で11%も人口が増えています。
収入水準も高めですが、住宅価格は安く、生活のしやすい街だと言えます。ただ、英語/フランス語以外を母語とする人の割合は他のランクインしている都市に比べると少し低め。また、犯罪率は非常に高くなっています。
- 総合ランキング:34位
- 人口: 226,682
- 人口増加率(2012→2017):10.9%
- 失業率: 5.7%
- 世帯収入(中央値): $83,178
- 平均住宅価格:$378,617
- 2BRアパートの平均家賃: $1,109
- 賃貸空室率:5.5%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 13.6%
- 1000人当たりの犯罪件数: 9,385/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:7.6%
4位:ブロサード(ケベック州)
By Ville de Brossard (Ville de Brossard) [Public domain], via Wikimedia Commons
4位は、同ランキングで昨年も4位だったケベック州のブロサード(Brossard)です。
ブロサードはモントリオールから車で20分ほどの郊外にある住宅地で、ベットタウンとなっています。公共交通機関を使って通勤する人の割合も高く、車が無くても住みやすいエリアです。
世帯収入や失業率は平均的ですが、住宅価格が低めで、特に賃貸住宅は2ベットルームでも800ドル程度で見つかります。
また、移民が非常に多い多民族都市で、英語・フランス語以外を母国語とする人が3人に1人の割合で住んでいます。中でも、多く住んでいるのがアジア系で、アジアン食品などの入手はしやすい街です。
- 総合ランキング:106位
- 人口: 87,842
- 人口増加率(2012→2017):7.4%
- 失業率: 7.0%
- 世帯収入(中央値): $73,711
- 平均住宅価格:$395,627
- 2BRアパートの平均家賃: $793
- 賃貸空室率:4.2%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 36.7%
- 1000人当たりの犯罪件数: 4,110/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:18.5%
5位:ブランドン(マニトバ州)
By Krazytea [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons
5位はマニトバ州ブランドン(Brandon)。ブランドンは州都ウィニペグに次ぐ第二の都市で、農業の盛んな街です。
失業率はカナダ平均を少し上回っているものの、世帯収入は平均よりも高く、住宅価格が低いところや、英語・仏語以外を母国語とする人の割合が高い点が評価されています。
ただ、犯罪件数はカナダトップクラスの高い値です。
- 総合ランキング:50位
- 人口: 50,634
- 人口増加率(2012→2017):6.2%
- 失業率: 7.7%
- 世帯収入(中央値): $71,811
- 平均住宅価格:$285,708
- 2BRアパートの平均家賃: $844
- 賃貸空室率:3.3%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 19.6%
- 1000人当たりの犯罪件数: 9,829/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:8.6%
6位:ゲルフ(オンタリオ州)
By Optionbooter [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
トロントから車で1時間ほど東にあるゲルフ(グエルフ)(Guelph)は、前年の同ランキング10位から6位に上昇しています。
失業率が低く、世帯収入も高めですが、住宅価格はそこまで高騰していません。また、治安も良く、英語・仏語以外を母国語とする人の割合も高い点などが評価されています。
- 総合ランキング:74位
- 人口: 134,832
- 人口増加率(2012→2017):6.0%
- 失業率: 5.6%
- 世帯収入(中央値): $83,447
- 平均住宅価格:$490,591
- 2BRアパートの平均家賃: $1,079
- 賃貸空室率:1.0%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 18.2%
- 1000人当たりの犯罪件数: 4,193/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:9.6%
7位:サンダーベイ(オンタリオ州)
By P199 (Own work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons
7位はオンタリオ州のサンダーベイ(Thunder Bay)。
サンダーベイはオンタリオ州北西部で最も大きな都市であり、五大湖のうち最も大きなスペリオール湖に面している港町です。
トップ10にランクインしている他都市に比べると、英語・仏語以外を母国語とする人の割合は低くめですが、森林産業や製造業に加え、近年は医療研究や教育分野も盛んです。雇用状況は良く、失業率は5.5%と低くなっている点や、手ごろな住宅価格も高評価となっています。
- 総合ランキング:97位
- 人口: 111,415
- 人口増加率(2012→2017):0.1%
- 失業率: 5.5%
- 世帯収入(中央値): $70,929
- 平均住宅価格:$269,059
- 2BRアパートの平均家賃: $940
- 賃貸空室率:5.0%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 11.1%
- 1000人当たりの犯罪件数: 6,563/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:6.2%
8位:オークビル(オンタリオ州)
By Ibagli (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
トロントとハミルトンの中間に位置するオンタリオ州のオークビル(Oakville)が8位です。
両都市に通勤圏内であるため、ベッドタウンとして人気のエリアで、ここ5年で人口は10%も増加しています。富裕層が多く住む高級住宅地であり、世帯収入や住宅価格が高くなっています。
住宅価格の面ではマイナスですが、カナダでもトップクラスの治安の良さや、住民の3人に1人が英語・フランス語以外を母国語としている点を考慮すると、移民にとっても住みやすい街だと言えます。
- 総合ランキング:15位
- 人口: 211,025
- 人口増加率(2012→2017):10%
- 失業率: 5.8%
- 世帯収入(中央値): $111,468
- 平均住宅価格:$879,261
- 2BRアパートの平均家賃: $1,423
- 賃貸空室率:1.1%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 29.3%
- 1000人当たりの犯罪件数: 2,088/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:10%
9位:ロンドン(オンタリオ州)
By Adam Colvin (Adam Colvin) [FAL], via Wikimedia Commons
トロントから車で2時間半、オンタリオ州南西部で最大の都市ロンドン(London)が9位です。
人口40万人の中規模の地方都市で、緑に囲まれた自然が豊か。教育機関が多く、学生が多く住む街としても知られています。
失業率や世帯収入はカナダ平均とほぼ同じですが、手ごろな住宅価格や英語・仏語以外を母国語とする人の割合の高さが評価されています。
- 総合ランキング:79位
- 人口: 399,125
- 人口増加率(2012→2017):4.7%
- 失業率: 6.9%
- 世帯収入(中央値): $68,459
- 平均住宅価格:$326,499
- 2BRアパートの平均家賃: $1,002
- 賃貸空室率:2.1%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 19.3%
- 1000人当たりの犯罪件数: 6,732/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:8.9%
10位:デルタ(BC州)
By Bobanny (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
前年の同ランキングでは5位だった、バンクーバーの南に位置するもデルタ(Delta)が10位です。
バンクーバーへは車で30分の通勤圏内ですが、自然豊かな落ち着いたエリアです。バンクーバーに比べると住宅価格は多少下がります。
世帯収入は約10万ドルと高く、移民率も高め。4人に1人が英語・仏語以外を母国語としています。中でも多いのは東南アジア系の住民です。
- 総合ランキング:23位
- 人口: 108,943
- 人口増加率(2012→2017):5.6%
- 失業率: 6.0%
- 世帯収入(中央値): $97,174
- 平均住宅価格:$820,429
- 2BRアパートの平均家賃: $1,113
- 賃貸空室率:–%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 27.7%
- 1000人当たりの犯罪件数: 5,118/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:9%
トップ10以下の気になる都市
ここからは、トップ10圏外の日本人の移住先や留学先として人気のある都市をピックアップしてみます。
ウィニペグ(マニトバ州): 15位
永住権が取得しやすいことで人気のマニトバ州。州都ウィニペグは平均以上の項目が多く、移民が住みやすい街だと言えます。
- 総合ランキング:45位
- 人口:736,028
- 人口増加率(2012→2017):7.4%
- 失業率: 7.4%
- 世帯収入(中央値): $72,265
- 平均住宅価格:$330,022
- 2BRアパートの平均家賃: $1,067
- 賃貸空室率:2.8%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 24%
- 1000人当たりの犯罪件数: 6,350/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:13.2%
トロント(オンタリオ州): 43位
カナダ最大都市トロントは就労機会は多いものの、人口が多い分、競争率も高く、失業率が高めです。
- 総合ランキング:129位
- 人口: 2,882,614
- 人口増加率(2012→2017):5.4%
- 失業率: 8.4%
- 世帯収入(中央値): $62,285
- 平均住宅価格:$808,377
- 2BRアパートの平均家賃: $1,341
- 賃貸空室率:1.3%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 44.2%
- 1000人当たりの犯罪件数: 3,788/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:24.4%
バンクーバー(BC州): 48位
日本人に最も人気のあるバンクーバーは、住宅価格や家賃の高さが目立ちます。
- 総合ランキング:102位
- 人口:669,660
- 人口増加率(2012→2017):6.0%
- 失業率: 7.4%
- 世帯収入(中央値): $62,938
- 平均住宅価格:$1,348,591
- 2BRアパートの平均家賃: $1,757
- 賃貸空室率:0.8%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 46.6%
- 1000人当たりの犯罪件数: 8,282/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:25.3%
カルガリー(アルバータ州): 57位
カルガリーは2015年の石油価格の暴落以来、失業率が高くなっていますが、世帯収入の高さは健在です。
- 総合ランキング:75位
- 人口:1,326,819
- 人口増加率(2012→2017):13.1%
- 失業率: 9.0%
- 世帯収入(中央値): $88,670
- 平均住宅価格:$517,030
- 2BRアパートの平均家賃: $1,260
- 賃貸空室率:6.9%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 29.8%
- 1000人当たりの犯罪件数: 5,279/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:14%
モントリオール: 83位
総合ランキングでは評価が低かったモントリオールですが、家賃の安さや通勤のしやすさなどから、移民向けランキングでは83位です。
- 総合ランキング:356位
- 人口:1,785,468
- 人口増加率(2012→2017):7.4%
- 失業率: 8.7%
- 世帯収入(中央値): $48,261
- 平均住宅価格:$478,859
- 2BRアパートの平均家賃: $799
- 賃貸空室率:4.0%
- 英語/フランス語以外を母語とする人の割合: 32.8%
- 1000人当たりの犯罪件数: 4,673/100,000
- 公共交通機関・徒歩・バスで通勤する人の割合:25.5%
まとめ
以上、新移民向けの「カナダ国内の住みやすい都市ランキング」をご紹介しました。
トップ10は下記の通り。
2位:ウォータールー(オンタリオ州)
3位:レジャイナ(サスカチェワン州)
4位:ブロサード(ケベック州)
5位:ブランドン(マニトバ州)
6位:ゲルフ(オンタリオ州)
7位:サンダーベイ(オンタリオ州)
8位:オークビル(オンタリオ州)
9位:ロンドン(オンタリオ州)
10位:デルタ(BC州)
また、トップ10圏外で、日本人に人気のある都市は下記の順位でした。
43位:トロント(オンタリオ州)
47位:バンクーバー(BC州)
53位:カルガリー(アルバータ州)
83位:モントリオール
今回のランキングは、雇用状況や、給料水準、賃貸相場、移民の多さなどで評価されています。いずれもカナダ移住するにあたり、とても大切な要因ですよね。
中でも、より住みやすさを実感しやすい要因が「移民の多さ」ではないでしょうか。移民が多い街では移民に対する理解度も高いですし、アジア系移民が多い街だと日本食材の入手も簡単ですし、日本食店も楽しめます。「食」は大事ですよね。
この移民の多さが考慮されている点でも、今回のランキングのほうが、よりリアルな住みやすさが表れた都市ランキングになっているのではないかと思います。
ランキングの中に気になる都市はありましたか?その他の都市のランキング情報はMoney Senseのページよりご確認いただけます。