カナダに人種差別がないって本当?白人系カナダ人の差別意識の本音をさぐる|カナダの差別問題①

更新 | 2017-01-18公開

 

200以上の民族が暮らし、さらに毎年20万人以上の移民を積極的に受け入れているカナダ。

民族・文化の多様性が尊重されていて、人種差別が少ない国と言われています。

でも、実際のところ、本当に差別はないの?

政策や社会の風潮で差別が禁止されていても、実社会には色んな考え方の人がいるもの。必ずしも差別が起こり得ないとは言い切れません。

そこで、今回は、カナダの人種差別について、実際にカナダ人たちがどう思っているのか、特に、差別をする側として考えられている白人系カナダ人側の「リアルな声」をまとめてみたいと思います。

カナダの人種差別の歴史

実際のカナダ人の意見に触れる前に、まずはカナダの人種差別に関する政策や社会の風潮についてご紹介したいと思います。

カナダは1971年に、世界で初めて「多文化主義政策」が導入された国です。

多文化主義政策というのは、民族的・文化的多様性を尊重し、人種や民族に関わらず、全ての国民をカナダ国家の構成員として平等に評価するというものです。

世界各国から年間20万以上もの移民を受け入れ、数多くの民族が共生しているにもかかわらず、大きな暴動も起きず、平和が保たれているのは、この多文化主義の賜物と言えます。

 

カナダ社会にも多文化主義は深く浸透しており、人種差別運動が活発に行われ、人種差別は社会上で強くタブー視されています。

人種差別をさけるため、オフィシャルな場では「鼻が高くていいね」という人種の特徴に触れるような会話すらもNGとされていますし、差別用語も徹底的に排除されています。

差別用語の代わりに、下記のようなInclusive Language(包括的言語)を使用することが社会のルールになっています。

  • ×:エスキモー⇒○:イヌイット
  • ×:インディアン⇒○:ファーストネイション、アボリジニー
  • ×:Colored⇒○:ブラック、アフリカンカナディアン

→関連記事「疲れてる?」も禁句!?アメリカ・カナダの会話で避けるべき12の話題
→関連記事海外生活に必須!差別のない英語表現「inclusive language」を覚えよう

カナダ人の人種差別意識

このように、制度的、そして社会的には、人種差別が撲滅されているかのようにも思えるカナダ。

でも、実際のところ、本当にカナダ人たちには差別意識はないのでしょうか?

ここからは、意見交換サイトQuoraの投稿より、カナダ人、とりわけ、差別をする側だと考えられている白人系カナダ人たちの意見を中心に紹介していきたいと思います。

白人女性 Jenniferさん

私たちの国は包括的な多文化国家だと言いますが、実際は人種差別は数多く起こっています。

私たちはオープンマインドで、多文化を受け入れてはいるけど、それでもまだ有色人種に対して古い考え方を持っている人もいます。

でも、その多くが、差別感情を上手に隠しています。なぜなら、もう社会的に人種差別は認められないから

人種差別感情を抱いているといっても、彼らは決してKKK(アメリカの白人至上主義団体)のメンバーでもないし、レストランやバスの隔離を希望しているわけでもありません。肌の色を理由に暴力を振るうことも、もちろんしません。

決して、そんな極端な差別はしないものの、黒人やアジア人などへの人種差別的な発言やジョークを、気軽に、そして笑いを交えながら、話しているのです。

そして、こんな風に心の中に差別的な思いを抱きながらも、彼らにも有色人種の友人や同僚がいるのです。

イギリスから移民した白人女性 Cathさん

表立った人種差別はないものの、カナダの差別問題は偽善的だと言えます。

例えば、周りの人が移民に対する不平不満を口にしていた時、「私もイギリスからの移民なのよ」と話すと、

あ、あなたは違うのよ!あなたは大丈夫!あなたは・・・・、えーーーっと・・・。

(ここの沈黙で、「白人だから」と考えているのが明白)

教育もちゃんと受けているし、英語もしゃべるし・・・。他の移民の人たちのことだから、気にしないで

こんな会話になることがあるのです。

でも、その一方で、先住民に対する差別はあからさまです。住宅環境、飲み水の水質、雇用や医療の機会すら享受できず、虐げられています。

50代白人男性 Scottさん

カナダ人は人種差別主義者ではないものの、他の国と同じように、カナダにも人種差別はあります。でもそれは、制度や政府レベルではなく、個人レベルの差別です。

なぜか?

私は社会学者でもなんでもなく、あくまで個人的な意見ですが、高齢者の多くが白人社会で育ちました。カナダにはいまや多くの有色人種が住むようになりましたが、年を取れば取るほど、変化についていくのは難しいものです。

また、我々のモザイク社会は融合・統一を強要していません。だから、「私たちと同じような洋服を着て、同じように行動するべき」という声を聴くこともあります。

暴力行為をふるったり、人種迫害をするような、明らかな人種差別ではないものの、こういった静かな人種差別が存在しているのです。

20代の若者がこんなことを言うこともありました。

地元の電話会社の仕事がすべて、「ブラウン」(恐らく、東南アジア人の意味)に取られている。不公平だ。あいつらのせいで、俺が仕事が見つからない

でも、彼に、その会社で君が出来そうな仕事があるのか、そして、実際に求人に申し込んだのかを聞いてみると、彼はいずれも「No」だと言うのです。

働くための努力を何もせず、自分のことを棚にあげて、「全部ブラウンのせいだ」と言う。彼の人種差別発言は、自分自身に対する言い訳でしかありません。

白人男性 Ryanさん

アメリカほどではありませんが、カナダにも数多くの人種差別が存在しています。

カナダでの人種差別は先住民に対するものです。これはアメリカの黒人差別よりも酷いと言えます。

もしスターリン(黒人差別発言をした元NBAオーナー)がカナダ人で、同じような差別発言を先住民に対して発したとしたら?

もちろん怒り出す人もいたでしょうが、アメリカで起こったような、国家全体が一丸となって彼を非難するような騒動にはならなかったでしょう。

カナダの先住民に対する人種差別は、それほど深刻なのです。特に私が住んでいるサスカチュワン州では。

白人男性 Scottさん

もちろん、人種差別は存在しています。

僕はインド料理が大好きなのだけど、僕のガールフレンドと一緒にインド料理レストランに行くと、僕のことを「地元民の裏切り者」だと言うのです。そして、インド料理を食べようともせず、ただ、彼らがいかに地元民の仕事を奪っているかという話を延々と続けるだけ。

インドレストランの話は彼女の不満のほんの一部です。言うまでもなく、僕らは長続きはしませんでした。

また、ある時、バーでアイルランド出身の男性に出会いました。彼は自分の人種に対してこだわりがあり、恋愛や友人対象に対しては、特に強いこだわりを持っていました。僕らは同じ白人同士にも関わらず、彼は僕のことを友人として受け入れられなかったのです。

カナダには数多くの人種差別がありますが、それは決して、白人対黒人や、白人対アジア人に対する差別だけでなく、このように白人同士でも起こり得るのです。

僕自身が白人だからか、個人的には他の人種よりも、白人同士の差別を感じることが多いです。

本当にバカらしい。

匿名希望

人種差別は肌の色の問題だけではありません。

カナダの黒人は東海岸の都市に集中していて、人口はたった3%です。アメリカの奴隷制度から逃げてきた人たちもいますが、その多くはアフリカではなく、大英帝国の一部だったカリブからです。

そのため、カナダにはもともと有色人種が少ないため、人種差別はないと信じています。でもこれは大きな間違いです。

西海岸に住むアジア人は長年酷い迫害を受けてきましたし、先住民に対する差別は決してなくなることはありません。今でも、「先住民は怠け者で、酒や薬そして政府の援助にだけ熱心だ」などと広く信じられています。

カトリック信者(フランス系)は、プロテスタントから迫害され続けましたし、ヨーロッパからの白人キリスト教信者は、英語を話さないから、敗戦側から来たなどと、仕事を奪われました。現在でも、シク教徒はムスリムやアラブ人と間違えられ、テロリスト呼ばわりです。

人種差別は以前のような制度化されたものではありませんが、今日にも蔓延っています。

カナダ人たちは「個人」を平等に評価しようと努力する一方で、その個人が所属する「グループ」に対しては軽蔑の意識を持ち続けているのです。

Bobさん

カナダにも人種差別はあります。それは、誰しもに「自分の種族に所属したい」という意識があるからです。

自分と違う他者は部外者と捉え、仲間としては見なしません。そして、自分の種族に属さない人は、見下してしまうのです。

ケベック出身白人女性 Benoîtさん

一部の地域では、人種差別はあります。

私はケベック出身ですが、ケベックでは多くの人が外国人を嫌っています。でも、トロントやバンクーバーのような多文化都市は、よりオープンです。

まとめ

以上、カナダの人種差別問題について、カナダ人がどのような意識を持っているのか、リアルな声をご紹介しました。

多民族・多文化主義を誇るカナダでは、社会の風潮上、差別は認められていないとは言え、先住民に対しては社会的差別や偏見が残っているようです。

一方、有色人種に対する差別は、他国に比べると際立った差別は少なめと言えますが、保守的な考え方で差別意識が強い人もいたり、表に出さないまでも、心の中では差別意識を持っている人が多いことも分かりました。

多文化主義政策が取られて45年以上が経過しても、人々の心の奥にある意識まで変えるのは、なかなか難しいものですね・・。今回、カナダ人のリアルな声をまとめていて、カナダ社会の本音と建前が見えてきた気がします。

でも、このような意識はカナダ人に限ったことではなく、また、白人種の人たちに限ったことでもないと思います。

他者との違いを見出すことで、自分のアイデンティティを感じたり、同じ民族同士で仲間意識を強めることは、国や民族に関わらず、誰しもに共通する性質だと思います。これ自体が差別意識の根源になっているのだと感じさせられました。

 

今回の内容は白人系カナダ人側の意見を中心にまとめましたが、次回の記事では、ビジブルマイノリティー側のカナダ人の声や、実際に差別を受けた人の声をご紹介します。

カナダで人種差別を受けたことある?アジア人など有色人種側の意見まとめ|カナダの差別問題②

IELTS受験者必見!