ピーナッツといえば、微量でも重篤化しやすく、食品アレルギーの中でも注意が必要な食べ物ですよね。
アレルギーを発症して、アナフィラキシーショックを引き起こしたら、命にも関わりますし、アレルゲンはできるだけ遠ざけて、乳幼児期にはピーナッツは与えない、というご家庭も多いと思います。
でも、2017年にアメリカ政府機関が発表した新ガイドラインでは、むしろ赤ちゃんのうちから、定期的にピーナッツを与えるべきだとされたのです。
今後の離乳食の進め方も大きく変わりかねない新ガイドラインの内容とは?アレルギー発症を抑えるためのピーナッツの正しい与え方は??
生後4~11か月からピーナツを食べると、アレルギー発症リスクが81%減
今回制定されたアメリカのガイドラインは、2015年に発表された研究結果に基づいています。
その研究内容とは、もともと卵アレルギーなどがあり、ピーナツアレルギー発症リスクが高い生後4~11ヵ月の乳児640人を、ピーナツ食品を週3回摂取したグループと、全く摂取しなかったグループに分けて、5歳児時点のアレルギー発症率を比較する、という研究です。
その結果、乳児たちが5歳児になった時点では、ピーナツを全く摂取しなかったグループのアレルギー発症率が17%だったのに対し、ピーナツを定期摂取したグループの発症率は3%にも下がったそう。
この研究結果により、乳児期からアレルゲンを定期的に摂取することで、その後のアレルギー発症リスクを81%も防ぐ効果があることがわかりました。
参考記事:LEAP Study、thestar.com
ピーナッツ摂取を控えたことでピーナッツアレルギーが増えた?!
これまでは多くの家庭で、アレルギーを恐れて、なるべくピーナツやソバ、甲殻類などは離乳食から遠ざけていたと思います。環境省の調査によると、離乳食にアレルゲンを避けるという親は、なんと9割にも上るそう。
我が家も然りで、小児科やアレルギー科の先生たちのアドバイスのもと、息子に初めてピーナツやソバを与えたのは1歳半以降でした。
でも、今回の研究に携わった教授の一人によると、こういった、子供からアレルゲンを遠ざけること自体が、食品への抵抗力や耐性を養う機会を奪い、結果として、アレルギーを増加させてしまったのでは、とのこと。
実際、アメリカではピーナツアレルギー発症率はここ10数年で3倍に増加していますし、日本でもその数は急速に増加しているそうです。
参考記事:産経新聞、認定NPO法人 アレルギー支援ネットワーク
米・新ガイドラインが推奨するピーナッツの摂取時期
アメリカ政府機関が定めた新ガイドラインでは、新しいピーナッツ摂取方法は下記のように推奨されています。
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- 湿疹や卵アレルギーなどが元々あり、アレルギーリスクの高い乳児は、医師の指導のもと、生後4~6ヵ月から摂取開始
- それ以外の全ての乳児(=アレルギーの可能性が少ない乳児)は生後6ヵ月から摂取開始
“Addendum guidelines for the prevention of peanut allergy in the United States”
by アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases)
アレルギーの可能性が少ない赤ちゃんは生後半年から。つまり、離乳食開始直後からですよね。アレルギーリスクのある赤ちゃんに至っては生後4-6か月からと、まだまだミルクやおっぱいだけの時期から、ピーナッツ食品を与えていくことに。
いずれのケースでもこれまでの離乳食の進め方とは大きく異なりますね。
乳児へのピーナッツの与え方
では、具体的に、どのように赤ちゃんにピーナッツを与えれば良いのか?
実際の与え方や注意点など、今回の新ガイドラインを受け、カナダアレルギー臨床免疫学会が推奨している方法を見ていきたいと思います。
与えるピーナッツは?
まず、与えるピーナッツですが、要注意なのが、
- ピーナッツ丸ごとは、絶対NG!
- ピーナッツバターそのものも、絶対NG!
この点はくれぐれもご注意ください。喉に詰まらせる危険があります。
乳児に与えるものは、お湯に溶いたピーナッツバターやピーナッツ粉、ピーナッツ入りのスナックなどが推奨されています。離乳食開始直後という時期を考えると、下記の方法が取り入れやすい方法として紹介されています。
- ピーナッツバター小さじ2杯を、お湯小さじ2~3杯と混ぜて冷ます
- ピーナッツバター小さじ2杯を、果物や野菜のピューレ小さじ2~3杯と混ぜる
- ピーナッツ粉小さじ2杯を、果物や野菜のピューレ小さじ2~3杯と混ぜる
溶かして与えるピーナッツバターは、できれば下記のような砂糖不使用で保存料などが入っていないものが安心です。
また、実際にガイドラインの中で推奨されているスナックが、下記のBambaというピーナッツスナックです。
Bambaは元々イスラエルで大人気のお菓子で、イスラエルでは乳児の頃から与えるのが一般的だそうです。イスラエルのピーナッツアレルギー発症率が非常に珍しいことから、乳児期のアレルゲン摂取の関係性で注目されていたお菓子でした。
今回のガイドラインでBambaの摂取が推奨されたことから、北米でも大変注目されています。今後は日本でもBambaのような幼児用ピーナッツスナックが発売されそうですね。
ピーナッツを与える時の注意
初めてピーナッツを与える時は、ごく少量を与えた後、10分間様子を見ます。そして、特にアレルギー反応がなければ、残りも与え、様子を見ることを進めています。
特にアレルギー反応が出なければ、その後も週3回を目安に定期的に与えていきます。継続摂取により、アレルギー化予防につながります。
また、初めてピーナッツを与えるときは、親にとっては不安も大きいものですが、アレルギーリスクが低い乳児の場合は、特に病院などに行く必要はなく、自宅で与えても問題ないとしています。
ただし、必ず、健康状態が良い時に始めること。風邪などを引いているときだと、病気の症状なのか、アレルギー反応なのかがわからなくなるからだそうです。
参考記事:CBC New: How to give babies peanut-based foods to cut allergy risk
まとめ
以上、アメリカ政府の新ガイドライン、ピーナッツアレルギーを防ぐためのピーナッツ摂取方法をご紹介しました。
ここまでの内容をおさらいすると──
- 乳児期の早い段階からピーナッツを与えた方が、アレルギー発症を抑えられる
- アレルギーリスクが高い乳児は、医師の指導の元、生後4~6か月で摂取開始
- アレルギーリスクの低い乳児は、生後6ヵ月から摂取開始
- ピーナッツ丸ごと、もしくはピーナッツバターそのものを与えるのは絶対NG
- お湯や野菜ピューレで溶いたピーナッツバターなどを与える
- 週3回を目途に定期的に摂取する
このようになります。
アメリカ政府のガイドラインと言うことで、世界的にも影響は大きく、日本でも今後は離乳食の進め方が変わってきそうです。
これまでは、アレルゲンはなるべく避けるという考え方が一般的だっただけに、生後半年の赤ちゃんにピーナッツを与えるというのは、なかなか勇気がいりますが・・、今後はできるだけ早く離乳食に取り入れたほうが良さそうですね。