カナダの医療、待ち時間の長さを州別比較。一番早く治療を受けられる州は?

更新 | 2016-08-03公開
This job isn't always easy

カナダに移住や長期滞在すると決めたとき、気になることの一つが「医療の問題」ではないでしょうか。

ご存知の通り、カナダでは内科や外科、心臓外科などの専門医は直接受診することができず、まずはファミリードクターやウォークインクリニックを受診し、GP(General Practitioner)と呼ばれる総合診療医に診察してもらい、そこから必要に応じて専門医に紹介してもらいます。

ただ、この専門医の待ち時間が非常に長い!

専門医の診察が数ヶ月~1年待ちなんていうこともあります。そして、さらに、手術などの治療を受けるまでの待ち時間も非常に長く、国民皆保険制度や医療費抑制政策の弊害となっています。

持病がある方はもちろんですが、今は健康な方でも今後の人生を考えたら、大きな病気やケガをしないとは言い切れません。カナダに住む人全てに、この待ち時間の長さは、大きな懸念材料だと思います。

しかし、医療の待ち時間の長さは地域によって、大きく異なるという事実があるのです。

今回の記事では、専門医にかかるまでの日数、そして、出術など治療が開始されるまでの平均の待ち時間を「州別」に比較してみたいと思います。

治療を早く受けられる州、または待ち時間が長い州はどこか?これからカナダ移住する方、移住先に悩んでいる方の参考になれば幸いです。

カナダの医療の問題点

国民皆保険制度を取り入れているカナダでは、医療費は原則すべて無料です。

でも、そのしわ寄せが、待ち時間という形で顕著に表れています。

外務省のHPでも、カナダの医療制度については、下記のように紹介されています。

 カナダの医療事情の最大の問題点は医療機関へのアクセスの悪さ,待ち時間の長さにあります。

一般に医療機関を利用する場合には,まず地域の家庭医を受診する必要があります。しかし家庭医は,実数が少なく,また患者数を制限することが許されているため,新規の患者を受け付けていない場合が少なくありません。運良く家庭医を持てた場合でも,医師は基本的に保険医であり診療報酬に上限が設けられているため,1日の診察人数を制限している場合も多く,予約が1~2週間後ということもあります。

また,専門医については家庭医の紹介なくしては受診できないシステムになっていますが,極端に医師数の少ない科(整形外科,皮膚科,産婦人科など)では,数ヶ月後から1年先にしか予約がとれない状況です。また,医療費抑制政策により,CTやMRIなどの検査機器の数が日本に比べて極端に少なく,検査の待ち時間も何ヶ月も先という状況です。

~中略~

ウォークインクリニックの時間外・週末・重傷の場合は総合病院(公立)の救急外来(ER)を受診することになりますが,これもまた待ち時間が長い状況です。ERでの待ち時間については州の保健省のホームページなどで公開されています。ERにおいては患者のトリアージ(ふるい分け)がトレーニングされた看護師によって行われており,命に関わる疾患については早めに治療が開始されますが,緊急性が無いと判断された疾患については後回しにするというシステムが徹底されています。

出典:http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/n_ame/canada.html

 

私自身、この医療の待ち時間の長さは、身をもって実感しています。

私自身の心電図の検査を受ける際も、3ヶ月待ち。しかもこれは、『急ぎ目』で検査依頼をかけてもらったにもかかわらず、です。

また、息子が小児心臓外科の専門医を紹介してもらった時も、8か月も待たなければなりませんでした。この辺りは下記記事に詳しく記載していますので、ご参照下さい。

カナダ医療の問題点「待ち時間が長すぎる!」心電図検査で8ヶ月待ち?!

治療の待ち時間の長さが深刻なカナダでは、毎年多くの人が海外へ治療を求めて渡航しているそうです。2015年には、なんと5万2千人ものカナダ人が治療の目的で海外渡航したそうです。(データ元:National Post

海外での治療となると、もちろん全額有料です。保険会社に勤める人から聞いた話ですが、整形外科の手術まで7ヶ月待ちと言われ、あまりの痛みに我慢できず、ドイツまで行って手術を受けた人の話も聞きましたが、その手術費は900万円だったそうです・・

治療開始までの待ち時間

gp referral

以下全てのデータ出典:https://www.fraserinstitute.org/studies/waiting-your-turn-wait-times-for-health-care-in-canada-2015-report

先ほども記載しましたが、カナダの医療制度では、まずファミリードクターやウォークインクリニックなどで、GPと呼ばれる総合診療医を受診し、そこから必要に応じて専門医に紹介してもらいます。

GPから専門医に見てもらえるまでの待ち時間、そして専門医のもとで実際に治療を開始するまでの待ち時間を現したのが、上記グラフです。

州別に見てみると、かなり大きな開きがあるのが分かりますね。

プリンスエドワード、ニューブランズウィック、ニューファンドランド・ラブラドール、そしてノバスコシアのカナダ東海岸側4州の待ち時間が平均よりも長めになっています。

一番長い待ち時間になっているのがプリンスエドワード島。なにか症状があってから、実際に治療が開始されるまで最大で43.1週間・・・、ということは、約10ヶ月待ちです。

一方、サスカチュワン、オンタリオは待ち時間が短め

プリンスエドワードでは治療開始までの待ち時間が10ヶ月だったのに対し、サスカチュワンではたったの3ヶ月です。

命に関わるような緊急を要するケースでは、優先的に治療が進められますが、それでも日本のような早さは期待できませんし、緊急度が低いと判断されたり、念のための検査などでは後回しにされてしまいます。

命に別状が無いとしても、痛みなどの症状を抱えた状態では、一日でも早く治療開始したいところ。待っている間にも、症状は深刻化する可能性もありますし・・。

生命に関わることなのに、この大きな地域各差は不平等だと感じざるを得ません。

診療科目別の待ち時間

prcedure

先ほどのグラフを診療科目別に表したものが、上記の表です。

同じ州内でも、診療科目によっては大きな差がありますね。

どこの州でも整形外科の待ち時間は非常に長い!非情すぎるくらい、長い!!ニューブランズウィックでは81.1週・・・、つまり1年半以上も待たなければいけないわけです!

整形外科というと、命に関わらないとしても、痛みを伴い、日常生活に支障が出る症状の方も多いでしょうし、この待ち時間の長さは辛いですよね・・

素人目線では、ガン治療を行う放射線腫瘍科、腫瘍内科の待ち時間は、どの州も比較的短めなのが、まだ救いだなと感じます・・。

地域格差が目立つところを取り上げると、外科治療では、サスカチュワンが8.8週(約2ヶ月)で治療開始されるのに対して、ニューブランズウィックでは56.2週(約1年)も待たなければなりません。同じ国民皆保険だというのに、この地域です・・。

CTに、MRI、超音波。たかが検査でも長い待ち時間

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検査を受けるだけでも、何週間も待たなければいけないのが、カナダの医療制度。

上記表は、CTスキャン、MRI、超音波検査、3つの検査の待ち時間を州別に比較したものです。

州別に見ると、全体的にはオンタリオの検査待ち時間は短めですね。

CTスキャンこそ、州によっての大きな差は見られませんが、MRIの待ち時間は格差が大きいです。オンタリオでは5週間の一方、ブリティッシュコロンビアでは24週も待たなければなりません!!

繰り返しますが、、、MRI検査を受けるだけで、24週間待ちです。もしその間に病気の進行が進んだら??本当に怖くなるデータですね・・

また、この表は2013年からの比較データにもなっていますが、全体的に見ると、2013年から2015年にかけて、どの州でも待ち時間は長くなる一方で、なかなか改善は見られません。

まとめ

以上、カナダの深刻な医療の問題である「待ち時間」について、州別に比較したデータをご紹介しました。

全体的にはサスカチュワン州、次いでオンタリオ州が待ち時間が短く、カナダ東海岸側の4州では待ち時間が長めとなっていました。

同じ治療を受けるにしても、州によっては2ヶ月で治療開始されるところもあれば、他の州では1年以上待ち。不平等とも言える格差です。

移住先を考えた際に、一番大きな決定要素は仕事だとは思いますが、これほどの地域格差があることを考えると、医療面もその要素として考慮したほうが良いかもしれませんね。

今回記事でご紹介したデータですが、こちらのPDFでより詳しい内容が確認できますので、気になる方はぜひご参照くださいね。

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