カナダの永住権を取得すると、5年毎にやってくる「PRカードの更新」。
とにかく面倒だし、お金もかかる。手続きの厄介さはもちろん、永住権という身分に不安を感じて、市民権の取得を考えている方も多いと思います。でも、そこには「日本国籍喪失」という大きな壁が立ちはばかる・・。
- カナダの市民権を取るメリット
- カナダの市民権の取得方法
今回の記事では、この2つの内容を中心にご紹介したいと思います。
この記事の目次
日本人がカナダ国籍を取得するメリット
カナダの「シティズンシップ」こと、市民権を取得し、カナダ国籍保有者となると、どんなメリットがあるのでしょう?私たち日本人の場合、主なメリットはこの9項目です。
- PRカードの更新が不要になる
- 一生カナダに住む権利が得られる
- 日本に長期滞在できる
- 応募できる政府系の仕事が増える
- 投票権が得られる、公職選挙に立候補できる
- 陪審員になれる
- 国外で有事が起きた時に政府に守られる
- 訪日外国人向けの無料・割引サービスが受けられる
- 大麻が合法になる
各項目詳しく見ていきます。
PRカードの更新が不要になる
市民権を取得すれば、PRカード(永住権ビザ)の更新が不要になります。
PRカードの更新と言えば、カナダ国外に滞在した日を全て正確に洗い出す必要があるので、頻繁に一時帰国や海外旅行・出張をしている方は、特に大変。PRカードの申請手数料(2019年現在は50ドル)だってかかります。
それに、気になるが老後。
カナダに住む限り、一生つきまとうPR申請。老後もずっとこの面倒な手続きをこなせる?政府からは更新時期のリマインダーもありませんが、忘れずに手続きすることはできる?認知症になったらどうする?
カナダ国外に出ない限り、PRカードが切れていても問題ないといいます。でも、PRカードが切れた状態で、急遽日本に一時帰国するとなったら?
カナダに入国できない可能性も出てきますし、下手したら、不法滞在中のおじいちゃん、おばあちゃん、なんてことにもなりかねません。
PRカードの更新から解放されるというのは、特に老後は、大きなメリットとなるのではないでしょうか。
一生カナダに住む権利が得られる
永住権は必ず更新できるとは限りません。消失することも、剥奪されることもあります。
まず、「5年間のうち、730日以上(=2年間)」カナダ国内に居住していることが条件です。海外勤務や、長期の一時帰国などで、合計3年以上カナダを離れることになったら、永住権の更新はできません。
また、犯罪などを犯して国外退去命令が下ったり、移民審査官が更新不可と判断した場合は、永住権は剥奪される可能性もあります。例えば、飲酒・ドラッグ(大麻含む)による危険運転、大麻を違法に販売するなどの犯罪を犯した場合も含まれます。
でも、カナダ国籍を取得してしまえば、一生、何が起きても───たとえ善良市民でなくとも、カナダに居住できる。この安心感は本当に大きいですよね。
戦争で日本がカナダの敵国となったら、第二次世界大戦中のように、カナダ国籍に関わらず迫害対象となるかもしれませんが・・。詳しくは下記の記事にて。
日本に長期滞在できる
カナダ国籍となることで、日本により長く滞在できるようになります。なんだか矛盾のようにも思えますが、その理由は上記のメリットに関連します。
永住権でカナダに暮らしている場合は、日本に暮らせる期間は最高2年。それを超えると、PR更新が出来ません。一方、日本国籍喪失デメリットの記事でも詳しく紹介していますが、外国籍となった場合、元日本人としての「在留資格」を取得すれば、5年間まで日本に滞在可能です。その間の就労も、もちろんOK。
となると、PR保持者の時は最大2年間だった日本滞在期間が、カナダ国籍を取得すれば5年間、在留資格を更新すれば、さらに長期間日本に滞在できるわけです。もちろん、在留資格申請の手間や時間はかかるものの、親の介護や仕事の都合などにも柔軟に対応できるのは大きなメリットではないでしょうか。
応募できる政府系の仕事が増える
カナダでは、永住権保持者であっても、セキュリティクリアランス(過去の犯罪歴などのチェック)を取得すれば、政府系の仕事、いわば公務員としても働けます。カナダ連邦政府内の職に就くことも可能で、実際多くの永住権組の日本人も政府機関で働いています。
ただし、高度のセキュリティクリアランスが要求される職種は、カナダ国籍保持者でないと応募できません。
実際にどんな職が該当するのか?カナダ政府のページには「jobs that need a high-level security clearance」としか記載されていないので、詳細は分かりませんが、警察や防衛省や外務省などの重要機密を取り扱う部署や職種などが該当するのかもしれませんね。
投票権が得られる、公職選挙に立候補できる
カナダ人になることで、選挙への投票権が得られます。そして、公職選挙に立候補し、政治家になることも可能です。
政治家になる人は限られているとは思いますが、選挙に参加して意思を表明できることは、カナダで暮らす上で大きな意味を持つと思います。政治の話題がより身近になりますし、気持ち的にも「ヨソモノ」ではなく、ようやくカナダ国民の一員になれる気がします。
ちなみに────選挙となると、立候補者が一軒づつ挨拶に訪問してくれたりするのですが、「Permanent Residenceなんです」と伝えた途端、笑顔でサクッと撤退する感じ、なんとも寂しいものです(笑)
陪審員になれる
カナダ国民になると陪審員として裁判に召喚される可能性があります。裁判によっては数日から、時には50日を超えることもあります。場合によっては、陪審員手当を貰えるとはいえ、予定を調整しなければなりませんし、メリットというより、デメリットと言うべきかもしれませんね。。。
国外で有事が起きた時に政府に守られる
テロ、災害、犯罪、事故など、カナダ国外で有事に巻き込まれた時、カナダ政府が優先的に守るのは、永住権保持者ではなく、カナダ国民です。
日本人は日本政府が守ってくれるので、問題ないのかもしれません。でも、例えば、政府が専用機で緊急帰国してくれるとなっても、恐らく帰国先は日本。カナダ国籍の配偶者がいる場合は、不安のさなかに家族が離れ離れになる可能性だってあります。
アメリカへの旅行でESTAが不要
通常、アメリカへの入国にはESTA(陸路の場合はI-94W)の取得が必要で、申請費用(14ドル)もかかりますが、カナダ国籍保持者になればESTA、もしくはI-94Wが免除になります。
ESTAが不要になれば、楽なのはもちろん、入国審査で下手に疑われることも少なくなり、国境を超えた買い物も、より気軽になると思います。
アメリカの就労ビザが取得しやすい
一般的には取得が難しいアメリカの就労ビザ。でも、カナダ国籍保持者であれば、「TN Visa」という要件が緩やかな就労ビザの対象となります。
アメリカ企業のリクルーターがカナダ人にも広く声をかけているのは、まさにこのため。ビザが簡単に下りるので、優秀な人材をカナダからも集めているのです。大国アメリカならではの専門職や、良い条件の元で働きたい方には大きなメリットだと思います。
訪日外国人向け無料・割引サービスが受けられる
最近の日本は「訪日外国人向け」の無料サービスや割引が凄いですよね。外国籍を取得することで、これらのサービスも受けられるようになります。
- 新幹線や電車が乗り放題でお得なJapan Rail Pass
- 高速道路が乗り放題のお得なパス
- ポケットWi-Fi無料貸し出し
- データ容量付きの無料SIMカード配布
- 国内航空券の割引
- レンタカーや宿泊施設の割引
- ミュージアムなどの割引 などなど
※一部、海外在住の日本人でも条件をクリアすれば利用できるものもあります。
政府はもちろん、地方の観光地も外国人観光客誘致にとても積極的。このような訪日外国人向けサービスは今後ますます充実していくのではないでしょうか。
大麻が合法になる
これはメリットとして掲げることに抵抗があるのですが、、、
ご存知の通り、大麻が合法となったカナダ。日本国民はカナダに住んでいるからといって、大麻に手を出すと違法で捕まりますが、カナダ国民になれば堂々と?大麻を使用することができます。
カナダ市民権の取得方法
最後に、カナダの市民権取得の条件や取得方法をご紹介です。
カナダ市民権の取得条件
- 永住権保持者
- 英語もしくはフランス語がCLB4以上
- 永住権保持者として過去5年間のうち、3年(1095日)以上カナダに滞在している
- 過去5年のうち、最低3年分のタックスリターンを行っている(申告義務がある場合)
- 【18~54歳の場合】シティズンシップテストに合格する
上記全てを満たした場合に、市民権取得が可能です。
国外退去命令や犯罪歴がある場合は、申請却下となる可能性があります。また、懲役期間中はカナダ国内の滞在期間としてカウントされません。
シティズンシップテストとは
市民権申請時に18歳~54歳の方は、シティズンシップテストに合格する必要があります。
シティズンシップテストとは、カナダの歴史・政治・シンボル・地理に関する試験で、全20問、上記のような選択問題となっています。20問中15問正解で合格です。
公立図書館などのサイトでもオンライン問題が提供されていますし、政府公式のDiscover Canadaでもテストに出る分野の学習ができます。
カナダ市民権の申請方法
- 申請用紙をダウンロード
- 必要書類を用意する
- 申請費用をオンラインで支払う
- 必要書類と申請費用の領収書を移民局に送付
- シティズンシップテストを受ける
- テストに合格したらインタビューを受ける
- 宣誓式に参加
上記が申請のプロセスです。申請費用は大人630ドル、未成年100ドルとなっています。(2019年6月時点)また、申請プロセスの平均は1年間となっています。
申請プロセスの詳細は政府HPにてご確認ください。
MMシティズンシップテストは合計3回まで受験のチャンスがあります。それでも不合格だった場合、市民権申請は不受理となります。再び市民権申請を行うことはできますが、また申請費用630ドルが掛かってくるのが痛いですね・・。
- カナダ市民権取得のメリット
①PRカードの更新が不要になる
②一生カナダに住む権利が得られる
③日本に長期滞在できる
④応募できる政府系の仕事が増える
⑤投票権が得られる、公職選挙に立候補できる
⑥陪審員になれる
⑦国外で有事が起きた時に政府に守られる
⑧訪日外国人向けの無料・割引サービスが受けられる - カナダ市民権の申請条件
過去3年以上カナダ国内滞在、CLB4以上の英語もしくはフランス語力、納税義務、シティズンシップテスト合格
以上、カナダの市民権取得のメリットや、市民権の申請方法などについてご紹介しました。カナダ籍を取得し、日本国籍を失うことのデメリットや、二重国籍が可能かどうか、などは下記関連記事にてご確認ください。