日本では、ホームレスの人たちは季節を問わず、駅周辺や公園、川沿いなどにダンボールハウスを作って生活されていますよね。冬場になるとホームレスが凍死するという痛ましいニュースも時々耳にします。
でも、世界にはマイナス20度を超えるような極寒の国もあります。
私が住んでいるカナダは、まさに極寒を代表する国の一つ。特にここ最近は、大寒波が北米を襲っており、一瞬でバナナも凍るような寒さの日もありました。
そのような極寒の地では、ホームレスの人たちは、一体どのように冬を過ごしているのでしょう?日本のホームレスのようにダンボールハウスで過ごしていたら、多くの人が凍死しかねません。
でも、実は、海外では、政府や非営利団体によるホームレス支援が充実している国が多く、冬場でも安全に過ごせるようになっています。
今回はニューヨークやモントリオールなど、冬の寒さが厳しい北米4都市の冬場のホームレス支援事情をご紹介したいと思います。
ニューヨーク
.@NYCDHS has issued a #CodeBlue for today at 4 p.m. During #CodeBlue, we focus on making regular, repeated contact with individuals on the streets to offer supports and services. pic.twitter.com/ERNM1Sq4nv
— City of New York (@nycgov) 2018年1月6日
6万人以上のホームレスを抱えているニューヨーク市。ニューヨーク市だけで、日本のホームレス人口を超えているから驚きます。
でも、ホームレス人口が多いニューヨーク市では、他の都市に比べても、充実したホームレス支援が提供されています。
市役所には「ホームレスサービス部門」が存在し、ホームレスの保護・支援活動を行っていますが、冬場になると特にその支援は手厚くなります。
夕方16時~朝8時の気温が0℃を下回る際には、「コードブルー」と呼ばれる警告を発令し、下記の支援活動を行っています。
- 全てのホームレスを収容できるシェルター(一時的な宿泊施設・避難所)とベッドを用意
- 夜8時から4時間毎(寒さが特に厳しい時は2時間毎)に見回りを行い、シェルターに避難するように声をかける
- 24時間いつでも暖を求めて避難できるよう、各地にドロップインセンターをオープン
シェルターと呼ばれる一時宿泊施設は、この写真のようにベッドが所狭しと置かれた大部屋がほとんど。
Winter heating bills put programs at risk at York homeless shelter https://t.co/ibh5II9HAs pic.twitter.com/EX5a7QEDGT
— WPMT FOX43 (@fox43) 2017年12月28日
それでも6万人を超えるホームレスを全員収容可能というのはすごいですよね。2018年の大寒波でも、ニューヨーク市は一時的にシェルターのベッド数をさらに増やして対応しています。
ただ、実際には、全てのホームレスがシェルターに避難しているわけではありません。
シェルターを嫌って地下鉄などに避難する人もいれば、保護施設やドロップインセンターの存在を知らない人もいます。
そのため、ニューヨーク市では、安全な場所に避難していないホームレスを見かけた場合には、ホームレス支援課に電話し、救援を求めるよう呼びかけています。
モントリオール(カナダ)
冬場の平均気温がマイナス10度前後、マイナス20度を下回る日もある厳しい寒さのモントリオールですが、ホームレス人口は3,000人にのぼると言われています。
モントリオールでも、市と非営利団体が協力し、ホームレスが寝泊まりできるシェルター(避難施設)を各地に用意しています。シェルターでは安全に寝泊まりができるだけでなく、食事の提供や、ソーシャルワーカーによる社会復帰支援も行われています。
しかし、冬場になると、シェルターが定員オーバーになることもしばしば。
そのため、特に寒いこの冬、モントリオール市は80万ドル(約7200万円)をかけて、ホームレス緊急支援活動を行っています。
公共交通機関の駅をホームレスの人々に開放したり、夜間に駅が閉まった後は、ホームレスの人々を避難所に送り届ける無料のシャトルバスを運行しています。また、民間店舗などに対しても、暖を求めるホームレスの人々に対して、理解を求めるよう促しています。
また、警察も街の見回りを行い、路上などにいるホームレスに対して、シェルターに避難するように声をかけて回っています。ニューヨークと同じく、避難していないホームレスを見かけた場合は、911に連絡するよう市民に呼びかけています。
エドモントン(カナダ)
体感気温がマイナス20度を下回り、市内のシェルターの収容率が90%を超えた場合、電車の駅を一晩開放し、一時宿泊ができるようになっています。
また、シェルターやホームレス支援センターなどでは、寄付で集められた防寒具の配布も行われています。
GRATEFUL!! 🧦🧤🧣
In th last 48 days, Jasmine and her fleet of #bundlebuddies made 17 trips to Bissell Centre, delivering 371 bags of warm clothing.
In total this season, @bundleupyeg has delivered 1,280 bags to inner-city agencies.
RT = high-fives for Jas & the team!#yegpic.twitter.com/MgerbvOoxy
— Bissell Centre (@BissellCentre) 2017年12月20日
様々な団体が防寒具の寄付を募っていますが、中でも、エドモントン在住の女性が始めた#Bundleupyegと呼ばれる防寒具の寄付活動では、12月までに1280袋分もの防寒具が集まったそうです。
ナッシュビル(アメリカ)
アメリカテネシー州にあるナッシュビルは、1月の最低気温が-2度ほどと、仙台と同じくらいの気温の都市です。
先ほどまでに紹介した都市に比べると、冬場の気温はかなりマイルドですが、行政と非営利団体によるホームレス支援対策は充実しています。
気温に応じてホームレスの避難先斡旋が行われるだけでなく、24時間以上、気温が0℃を下回る際には、ホームレスに無料のバスパス(乗車パスポート)を配布しています。ホームレスはバスパスを使ってシェルターまで移動したり、バスに乗車することで寒さから逃れることが出来ます。
日本とは異なるホームレスの生活状況
北米の4都市のホームレス支援対策を見る限り、行政と非営利団体による手厚い支援や人々の寄付のおかげで、ホームレスの人たちは無事に極寒の冬を生き延びることができているようです。
私自身、カナダに住み始めて3年になりますが、ホームレスらしき人は日本より格段に多く見かける一方、段ボールハウスやブルーシートの家はまず見かけません。これはシェルターが充実しているからこそでしょう。
また、シェルターにはシャワーも用意されているためか、ホームレスの人たちの匂いが気になったこともあまりありません。
人々の寄付活動も非常に活発です。
スーパーに行けば、入り口付近に必ず、寄付用の大きなボックスが用意されており、いつも誰かが寄付したであろう食料が大量に入っています。クリスマス時期になると、チョコレートや高級お菓子なども寄付されています。
また、日本では禁止されている物乞い行為も、カナダでは違法ではありません。路上で寄付を募るホームレスにお金を渡す人も多く見かけます。一日寄付を募るだけで、50ドル以上集めるホームレスもいるそうです。
このように、社会や人々の慈悲の精神が根付いていて、ホームレスを取り巻く環境は日本とは大きく異なるように思います。
その一方で、ホームレス人口は増加の一途
出典:The Coalition for the Homeless
でも、その一方で、各都市ではホームレス人口が増え続けているのも事実。
全ホームレスにシェルターを用意すると宣言しているニューヨーク市でも、ホームレス人口はこのように増加の一途です。
ホームレス人口の増加には、社会格差の広がりや、住宅価格の高騰、高い失業率、薬物やアルコール中毒など、様々な問題が原因だとは思います。
でも、暖かい宿泊施設や食事の提供、人々からの寄付といった手厚い支援があるからこそ、ホームレス生活から抜け出せない人も、一定数はいるような気がしてなりません。
人権保護の点でホームレスの救援活動は必要不可欠ですが、「自立を妨げない程度」であることも大切ですよね。カナダのホームレス支援環境を見ていると、その「程度」は行き過ぎてはないかと思うこともあります。若くて元気そうな若者がお金をもらっている光景なんかを見ると特に・・。
とは言え、冬場は命に直結しますし、難しいところですね。
参考記事
How cities help the homeless during a deep freeze
Code Blue & Code Red – Coalition For The Homeless
Montreal prepares to help homeless population during cold snap
Edmonton initiative steps up for homeless when temperature drops