クッキーカッターハウス(cookie cuttter house)ってご存知ですか?
「まるで型抜きクッキーのような、同じような外見の家々」を指すのですが、トラクトハウジング(Tract housing)とも呼ばれたりします。
日本の都会の住宅地も、細長い鉛筆のような建売住宅が立ち並び、なかなか印象的な風景ですが、北米のクッキーカッターハウスの街並みは、さらに強烈!
アメリカやカナダのクッキーカッターハウス事情をレポートしたいと思います
新興住宅地に登場するクッキーカッターハウスたち
ここはカナダ中央に位置するオンタリオ州マーカム。カナダ最大都市トロントにもほど近い、閑静な住宅地なのですが――
By IDuke (this edited version: Sting) [CC BY-SA 2.5], via Wikimedia Commons
この通り、同じような住宅がまるでレゴブロックのように並ぶ風景!
色やデザインは多少異なるものの、基本的な窓の位置や、家の形はほぼ同じ。道を一本入り間違えても気づかない!まるで、入り込んだら出られない迷路のようです・・
お次は、超有名IT企業が集まるアメリカのシリコンバレーにあるサンノゼ。サンフランシスコに続いて、最も住宅価格が高いとされる都市の1つですが、そんな高級住宅地にもクッキーカッターハウスは立ち並びます。
By CC BY-SA 2.5, Link
こちらは高級住宅地だけあり、一軒一軒が広いタイプのクッキーカッターです。庭も大きく、家同士にもゆとりがあるので、良い意味で「統一感ある街並み」となり、まだ受ける印象は違うかもしれません。
私の住む街、カナダのオンタリオ州の郊外にもクッキーカッターハウスが延々と並んでいる新興住宅地があります。
同じ見た目の家が、道の両サイドにずらっと並んでいます。通りを曲がっても、曲がっても、同じ家々が延々と続きます・・・
こちらのクッキーカッターハウスは、一軒家とは異なり、「タウンハウス」と呼ばれるもの。タウンハウスは、いわゆる日本の長屋のようなもので、写真をよーく見ていただくとお分かりいただけるのですが、両サイドがお隣とくっ付いています。
タウンハウスは新興住宅地で多く見かけるのですが、一軒家のクッキーカッターハウスよりも、タウンハウスのほうが『同じ家が並んでいる』という印象が強く、初めて見る人には異様とも思える風景です。
このように、アメリカやカナダの新興住宅地に広がるクッキーカッターハウス。
広大な敷地に、何百という家々が立ち並ぶ景色は、本当に圧巻です。日本の団地は「酔っ払ったら帰れない」、なんてよく言ったものですが、北米のクッキーカッターハウスも負けず劣らずですよね。
クッキーカッターハウスが人気の理由
「こんな同じ家ばかりの街に住みたくない!」
そう思われた方も多いかもしれません。アメリカ人やカナダ人も、決して好んでクッキーカッターハウスを購入しているわけではありません。ここまでクッキーカッターハウスが立ち並んでいる背景には、高騰する住宅事情があります。
(出典: Real Estate Board of Greater Vancouver)
こちらは、カナダ西海岸バンクーバーの住宅価格の推移を表したグラフ。
2000年に入ってからというもの、バンクーバーの住宅価格が異常高騰が続いています。バンクーバーの住宅価格は今や、一軒家の平均価格は約$2.7-million(約2億3千万円)!(2017年3月現在)
アメリカのシリコンバレーも住宅価格の高騰が続き、毎年の住宅価格上昇率は10%近くにもなっていて、今やアメリカを代表する超高級住宅地になっていますよね。
しかし、高騰する住宅価格の一方で、給与水準が追いつかないというアンバランスが発生し、家が買いたくても買えない人も続出。そこで、早く、安く、広大な敷地を一斉に開発できるクッキーカッターハウスの需要が高まったというわけです。
また、日本ではあまり見かけない長屋タイプのタウンハウスですが、北米で多く建設されている理由は、やはり「安くて早い」にあるようです。上記は、カナダ最大都市トロントの住宅価格の変動を表していますが、一軒家に比べると、タウンハウスの住宅価格は断然低くなっています。
「庭も広くて、自分らしい一軒家が欲しい!でも、住宅価格は高騰し、現実は厳しい・・・」
――というわけで、郊外のクッキーカッターハウスを購入している人が多いようです。
個性の無い住宅だと嫌う人も多いですが、一軒一軒がバラバラの街並みよりは、統一感ある美しい景観だとも言えます。そう、それはまるで、エーゲ海に浮かぶサントリーニ島の白い家々のように――
・・・・いや、やっぱり、違う・・・かな・・
いかがでしたか?みなさんはクッキーカッターハウスをどう思われますか??