カナダのLGBT事情②性的マイノリティから見たリアルなカナダ。差別やいじめは?進学や仕事で不利になる?

カナダはLGBTに寛容な国と言われますが、カナダ在住のLGBTの方々はどのように感じているのでしょうか?

前回の記事では、カナダのLGBT事情を統計データと共にご紹介しましたが、今回はLGBTの方のリアルな意見を中心に、仕事や進学でLGBTを理由にした差別などがあるのかをご紹介したいと思います。

カナダのLGBT事情①同性愛者の権利、LGBT人口、結婚率、子持ち数、そして、気になる同性愛の支持率は・・
法的にも社会的にも同性愛を寛容だと言われるカナダ。実際にLGBT人口は多いのか?同性結婚や子供のいる世帯の数、国内の同性愛支持率など、カナダのLGBT事情をご紹介です。

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仕事上でLGBTは不利になる?

カナダでは人種や性別、年齢、宗教、そして性的指向を理由に差別することは人権法で禁止されています。そのため、同性愛者であることを明らかにしても、進学や就職活動で不利になることはありません。

でも、実際のところ、どうなのか気になりますよね。

就職活動で人種差別がないと言っても、「カナダでの勤務経験がないから」という「体裁の良い理由」で面接にたどり着けないことも多いです。名前をイングリッシュネームにしたら、書類審査に通る回数が激増したという話もよく聞きます。

性的マイノリティの方は、仕事や進学で不利になっていると感じたことはあるのでしょうか?

7割の職場で同性愛者への差別がない

814人のカナダ人(内、半数がLGBTQ)にアンケート調査を行った結果では、7割近くの人が、自分の職場にはゲイ・レズビアンに対する差別がないと答えたそうです。

ここで言われる差別には、レズビアンやゲイじゃないかと勝手に推測したり、不適切な言動だったり、LGBTを理由に昇進できない、などがあります。

3割の職場では、このような差別が残っているものの、実際にLGBTの人に調査して、7割の人が差別がないと感じているというのは、さすがカナダ。

仕事上でも、自分のアイデンティティを否定することなく、安心して働ける職場が多いと言えます。

→参照:Benefits Canada「One-third of Canadians don’t see their work as LGBTQ inclusive: study

トランスジェンダーほど差別を受けやすい

ただ、ゲイやレズビアンと違い、身体の性と心の性が一致しないトランスジェンダーほど、仕事面で不利になることが多いようです。

先ほどと同じ調査結果でも、45%の人が職場にはトランスジェンダーに対する差別があると答えています。

また、この点は失業率にも現れていて、カナダ平均の失業率が7%前後の一方、トランスジェンダーの失業率は20%にのぼります。フルタイム勤務している人も33%しかいないそうです。

→参照:CBC News「Transgender unemployment is a result of discrimination, advocate says

見た目には分かりにくいゲイやレズビアンの人と違って、トランスジェンダーの人は容姿から差別を受けやすいのかもしれませんね・・。

しかし、今カナダでは、トランスジェンダーの差別を禁止するための法案が可決されようとしています。これまでの人権法では、人種、宗教、年齢、性別、性的指向に基づく差別を禁止していましたが、この項目の中に「自身が認識する性別」を追加しようというものです。

この法案が通ることで、トランスジェンダーの方が直面している問題も改善されていくのではと思います。

進学でLGBTは不利になる?

カナダの大学では、書類審査や面接が必要となりますが、進学においてもLGBTが不利になるようなことはあるのでしょうか?

下記は「ゲイであることは、メディカルスクールへの進学が不利になるのか?」という質問に対して、実際にLGBTの方から寄せられた意見です。

ゲイであることは決して不利にはなりません。

ただ、学校生活には未だいじめは存在しています。

自分の性的指向を明らかにする必要はありませんが、もしカバーレターにLGBT関連の課外活動を書いているのなら、正直に話した方が良いでしょう。

私自身は、メディカルスクールの願書にはLGBT関連のことはあまり書きませんでしたが、履歴書にはLGBT関連の支援運動について色々記載していました。

でも、そのことに対して、特にネガティブな反応はありませんでした。

むしろ、支援活動について興味を抱いてもらえ、書類審査に通って面接につながることが多かったくらいです。(医学部卒業生)

また、下記のような回答もありました。

学校側は様々な人を受け入れようとしています。そのため、同性愛者であることは、決して不利になならず、むしろ、有利にすらなりえます。(内科医女性)

LGBTであるかは関係なく、本人が何を成し遂げたかが重視されていて、非常にフェアだと言えますね。他にも大学進学などのデータを見てみましたが、LGBTが不利になるということは全くなさそうです。

前回の記事にもあった通り、学校生活ではLGBTを理由にしたいじめは存在いているようですが、それも大学生ともなると、大人の思考もできますし、中学・高校のようないじめは少なくなるのでは、と思います。

LGBTから見たカナダ社会とは?

次に、LGBTの方の実際の意見もご紹介したいと思います。

彼/彼女たちはカナダ社会についてどう思っているのでしょうか。

オンタリオ在住レズビアン女性Juliaさん

オンタリオ州では、私が同性愛者であろうが、周りの人たちは全く気にしていません。

唯一あるとすれば、自分とは異なるもの、そしてトレンディなものを初めて見た時のように、良い意味で興奮して接してくる人がいるくらいです。

元々の性別とは異なる容姿をしている場合、差別に合いやすいかもしれませんが、私とガールフレンドの場合は、お互い容姿は女性ですし、子供もいて、安定した家庭を築いているので、社会からは寛容に受け入れられています。

また、私の家族と友人たちは自由主義者ばかりで、私自身も信仰している宗教がないことも、明らかな差別を受けたことがない理由でしょう。

しかし、周りには差別を受けた経験がある友人もいます。また、学校では性的マイノリティを理由にしたいじめがあるという話も聞きます。偏見を持つ人、いじめをする人はどこにだっているのです。

全てのカナダ人が同性愛者を好んでいるわけではないし、何かの理由があって受け入れてくれない人もいます。時には、そんな感情を顔に出す人もいるかもしれません。

でも、カナダ社会は、見知らぬ人に対して、とても礼儀正しく接する文化が根付いているので、そんな無礼な態度を取る人はあまりいません。

トランスジェンダーの息子を持つJamesさん

息子がトランスジェンダーです。トランスジェンダーの同僚もいます。

世界中のどこだって、誰にだって、安全な場所はありません。人は完璧ではないからです。

でも、世界中の多くの場所に比べると、カナダはとてもオープンで、寛容です。そして、カナダの中でも、大きな都市ほどよりオープンです。

バンクーバー在住LGBT男性Benさん

職場でいじめにあっています。たしかに性的マイノリティに対するいじめや差別は存在していますが、職種や住んでいる地域にもよるでしょう。

カナダは非常に偏見のない社会だと言えますが、それでもまだ同性愛嫌悪が残っています。

ゲイ男性Mathiasさん

これまで、小さな町から大きな都市まで住んできましたが、ほとんど差別は受けたことがありません。

同性結婚は11年前に大きな反対もなく可決されました。そして、各地でプライドパレードも開催されていますし、2014年にはトロントでワールドプライドも開催されました。パレードには子供やLGBTQの人々以外だって多く参加しています。

パレードの目的は、権利を守るというより、お祭り騒ぎのようになってきてはいますが、もちろん、平等な権利や改善を求めて参加している人もいます。

それはなぜか──?

カナダはLGBTに関してとても自由な国ですが、それでもまだ、課題があるからです。

あとがき

今回、2回にわたってカナダのLGBT事情についてご紹介しました。

LGBTについて記事にしようと思ったきっかけは、カナダ移民を目指すLGBTの方からメッセージをいただいたことでした。

日本での生活はLGBTの方にとって生きづらく、カナダへの移住を目指しているとのことで、改めて日本とカナダのLGBTを取り巻く状況について考えさせられました。

そして、カナダはLGBTに寛容な社会だと言うけど、実際のところどうなのか、日本からはリアルな状況が分かりづらい。そこで、データや当事者の声を集めて、少しでも分かりやすくお伝えできればと思いました。

日本に比べると、カナダは本当にLGBTに寛容な社会です。

カナダに住み始めた頃、とても印象的だったのが、ラジオのリスナーからの電話質問コーナーで、リスナーの1人が「僕は60代の黒人ゲイなんだけど、」とさらりと自己紹介をしていたこと。「さすがカナダだなぁ」と驚いたものです。

皆、性的指向に非常にオープンで、街中でも堂々と手をつないでいる同姓カップルを見かけますし、トランスジェンダーの店員さんも多く見かけます。息子の通う小学校には、2人のお母さんがいるクラスメートもいます。

そして、周りも変な視線を送ることなく、性的マイノリティを当たり前に受け入れている。

性的マイノリティは決して珍しいことではなく、人それぞれ持ち合わせた「個性の一つ」にすぎない、そんな風に思わせてくれる社会です。

今回、実際にいろいろなデータでみると、全ての人が同性結婚を認めているわけではなかったり、学校でいじめがあったり、一部の職場では差別が存在していることも分かりました。

オープンなカナダ社会を目にしてきただけに、正直、この結果はとても意外に思いましたが、でも、すべての人が同じ意見を持っているわけではないんですよね・・。それこそが「多様性」なわけで。

ただ、レズビアンの女性の意見にもあったように、カナダはとても礼儀正しい文化です。と同時に、「感じの良さ」を大切にする文化でもあります。ダイレクトに物を言わず、いい意味でも、悪い意味でも、本音を隠し、感じ良く対応してくれる人がとても多い。

そのため、実際には同性愛を認めていない人でも、本人を前にして、差別的な言動をとる人は少ないと思います。この点は、下記で触れた人種差別とも共通しますね。

カナダに人種差別がないって本当?白人系カナダ人の差別意識の本音をさぐる|カナダの差別問題①
多文化主義国家カナダでは本当に人種差別はないのか?一般的に差別する側だと考えられている白人系カナダ人達の差別意識に対する本音をご紹介です。

LGBTに対して偏見が全くないとは言い切れませんが、結婚も、子供を持つことも、福祉も、当たり前に平等の権利が保障されていますし、多くの職場では差別は起きていません。確実に、日本よりも自由に生きられる社会だと思います。

LGBTを理由に海外移住を目指す方にとって、留学や現地就職など、きっと不安も大きいと思いますが、カナダが、自分自身のアイデンティティを否定することなく、ありのままで生きていける場所になることを、心から祈ります。

参考情報:Quora